「検索意図を理解する」の本当の意味とは?~SEOとインターネット検索 トレンド2021 レポート~

2021.01.04

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この記事の著者

渡辺 隆広

株式会社アイレップ
SEM総合研究所 所長

日本のSEO黎明期である1997年よりSEOサービスを開始。2002年に会社設立(株式会社イー ・プロモート)後、2005年4月より株式会社アイレップにてSEM総合研究所 所長を務める。アイレップのSEOサービスを監修する他、日米欧の検索業界の市場調査、サーチ マーケティング関連のソリューション開発、検索エンジン企業等への事業展開アドバイスなども行う。SEO分野での第一人者として多くの執筆・講演活動で活躍中。主な著書に「検索にガンガンヒットさせるSEOの教科書」(翔泳社刊)等。また、専門誌・サイトで多数の連載記事を担当し、その高い専門性で人気を博している。

株式会社アイレップ
SEM総合研究所 所長

2020年12月に、アイレップ主催のウェビナー「SEOとインターネット検索 トレンド2021」を開催、来年以降の検索エンジンやSEOの展望について、SEM総合研究所所長・渡辺隆広が講演をしました。今回は、この講演で言及した話題について、インタビューをしました。

(聞き手:増渕 佑美

「検索意図を理解する」は、優れたエクスペリエンスを考えること

増渕(インタビュアー):
よく「検索の意図を理解しよう」といいますが、この言葉の意味を取り違えられているという話をしていました。この点について、もう少し詳しく教えてください。

 

渡辺:
インターネット検索技術はこの20年間で大きく進化しました。Googleは1998年9月4日に米国で創業しましたが、その当時は検索窓に入力された文字列を含む文書を表示するだけの全文検索サービスでした。もちろんGoogleはPageRankというリンク解析を通してページの人気度を判定するという(当時)革新的な手法を持ち込みましたが、あくまで検索文字列と関連性が高そうなページを表示しているだけの検索エンジンに過ぎませんでした。

しかし20年あまりが経過し、検索エンジン利用が日常生活にすっかり溶け込んだ現在(2020年)、検索エンジンはもはや、単に検索語句を含む関連性が高いページを表示するサービスではありません。検索利用者は、あるタスク‐たとえば明日の天気を知る、漢字の読み方を調べるといった単純情報検索から、買い物をする、動画を視聴する、アプリや音楽を手に入れる、など複雑な取引まで‐を遂行するために検索エンジンを利用します。GoogleやBing(旧MSNサーチ)は検索結果に単に10本の青いリンクを表示することを止め、その検索利用者の課題解決やタスク完了を支援できるような検索機能や情報提供をおこなうようになりました。

こうした検索サービスの変化を踏まえると、今日の「検索の意図」とは検索クエリの背後にある意図を探る以上の意味、すなわちエクスペリエンスであると捉えるほうが適切でしょう。

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検索語句の完全一致の必要性が低下したのだから、SEOのアプローチも変えるべき

増渕:
「エクスペリエンス」と定義すると、私たちSEO担当者の仕事はどのように変わるのでしょうか。

 

渡辺:
この文脈におけるエクスペリエンスとは、あるタスクの遂行を試みているユーザーにとって理想的な体験を考えることです。つまり、検索語句を起点にするのではなく、利用者の体験を起点に、どんな情報を、どのような形式で、どのチャネルでアプローチするか考えることです。

検索語句を起点にするのは、まだ検索エンジンが全文検索サービスだった2000年代の発想です。しかし、先ほど説明したように検索エンジンの役割自体が20年で変化したこと、そしてBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)といった技術の登場により、検索語句の完全一致は求められていません。その一方、GoogleはSearch Quality Raters Guidelines (SQRG)のなかで"beneficial purpose"(有用な目的)という用語で説明するように、Webページは誰かの何らかの助けになるから作成されているはずという前提があり、それがページ品質を考えるための第一歩になっています。

つまり、エクスペリエンスを意識することで、現実のユーザーの状況と文脈をより詳細に理解する意識付けになりますし、それによってSEOあるいはGoogleに囚われない柔軟なデジタル戦略の発想にもつながります。

たとえば、よくある勘違いのひとつとして、SEOのためにはテキストコンテンツを作らなければならないという誤りがあります。別にSEOだからテキストでなければならない必然性は全くありません。最高のエクスペリエンスを考えると4コマ漫画が適切なら、それ(画像)で作ればいいし、それが動画と判断されたら無理にテキスト情報を追加する必要もないのです。

SEOだからテキストでコンテンツを作るという発想が間違い

増渕:
少し話題がずれるかもしれませんが、なぜテキストである必要はないのでしょうか?検索エンジン対策をするなら、やはりテキストのほうが検索エンジンは情報を処理しやすいのではないでしょうか?

 

渡辺:
今日のSEOは、究極的には自分のWebサイトが選ばれることがもっとも大切だからです。「選ばれる」とは、自社のブランドで検索をされること、自社のブランドがインターネットで言及(メンション)されること、検索結果ページ内に自社のブランドが含まれていることを期待して検索されることです。いわゆるブランドシグナルの評価に影響します。

上記の目的を達成するためには、検索チャネルだけでなくソーシャルや広告も積極的に活用し、オーディエンスを形成し、関係性を強化していくことが大切です。4コママンガや動画コンテンツを届けるために検索チャネルを使わなければならない制約はありません。
すなわち、優れたエクスペリエンスを提供できるコンテンツを(検索以外の)チャネルで届けていけば、巡り巡って検索の評価にも影響します。

増渕:
コンテンツ閲覧を検索経由を前提にしていることが間違っているのですか?

渡辺:
その通りです。SEO文脈でコンテンツマーケティングに取り組む企業の多くは、そのコンテンツを検索エンジン経由でアクセスされることを前提にしています。その前提は2000年代の発想であって、2020年の今日には相応しくありません。

増渕:
私もずっとSEOの仕事をしていますが、確かにInstagramやTwitterで流れてきた情報をもとにあれこれブラウジングすることがあります。

渡辺:
「検索クエリからニーズを紐解いて記事を作成」という手法は、Webサイト内に文字通りまったくコンテンツが存在しない企業が最初に取り組むステップとしては有用です。検索クエリとはつまり検索ニーズがすでに存在しているところからコンテンツを作成することになるので、時間とコストパフォーマンスの観点から優れています。

しかし今日、YouTubeやInstagram、LINE、Twitterなどさまざまなメディアが登場し、インターネットにおける情報探索も多種多様です。必ずしもGoogleに依存していません。こうした環境変化にあわせて私たちの検索マーケティングも軌道修正をおこなうべきです。

現実のユースケースを考えて有用な情報を提供する

増渕:
話をエクスペリエンスに戻します。エクスペリエンスで考えるための、具体的な方法を教えてもらえますか。


渡辺:
ここでは「一般化ではなく具体化する」と「誰と文脈を明らかにする」という2つの話を例にあげます。本講演を聴いていない方にもわかるように、ある検索語句を題材に、エクスペリエンス視点で説明します

※ 説明の便宜上、検索語句を挙げて話を開始しています。以下の話は実務では「語学留学を考えている学生または社会人の意志決定を支援する」というトピックからカスタマージャーニーを作成して、最後に検索クエリデータで抜け漏れを確認するというステップを踏みます。


たとえば「語学留学 米国 カナダ 違い」という検索語句があったとします。きっと検索クエリからコンテンツを作成することになれている人はこのように考えると思います。「国別の違いを知りたいニーズはありそうだから、主要国別の違い説明ページを用意して、治安や文化、金銭、食事の項目別に特徴を書いたページを作ろう」。でも、この方法が一番ダメです。


増渕:
え!それはなぜダメなんですか?


渡辺:
Googleはこうした紋切り型の一般化した情報ページを嫌うからです。だいたい、このケースは主語が「社会人」なのか「学生」、学生でも「高校生」「大学生」かで気になるポイントが全然違うはずです。また、その語学留学の滞在時間が2週間なのか3ヶ月なのか、それとも12ヶ月なのかによっても重視する項目のウエイトは変わるでしょう。2週間なら食事は大した問題にならないかもしれないし、12ヶ月だと医療関係が気になる人も出てくるでしょう。


増渕:
なるほど。紋切り型で作ってしまうと、誰にとって役立つのかわからない。それがエクスペリエンスを損ねるということですね。


渡辺:
その通りです。さらにいえば、検索者は別に違いを知りたいのではなくて、「最終的に、どこの国に語学留学するか決めたい」ところがニーズなのです。そのゴールを目標にしているなかでの「語学留学 米国 カナダ 違い」という検索語句ですから、意志決定をするための判断基準を提示して、意志決定を後押ししてあげる工夫が必要です。たとえば、米国の語学学校で週18時間以上の授業を受ける場合は学生ビザF1が必要ですが、カナダはそれが必要ありません。短期希望の社会人にとって、この差は大きいですし意志決定の要素になりうるでしょう。

違いを説明するのではなく、意志決定を促すための判断基準を提示する。これは検索ランキングアルゴリズムのトレンドを踏まえると、とても大切な視点です。


増渕:
これを実践するためには、その分野について相当に詳しくなる必要があります。


渡辺:
だから誰が書いたのかわからないコンテンツを使ってはいけないし、安価だからとクラウドソーシングで専門知識を有さない人に任せてはいけないのです。専門知識を有する人に、検索語句情報は渡さず、かわりにコンテンツ要件(誰にとって有用とするか、記事を通してどんな価値を伝えたいのか)を渡せば、少なくとも、クッキーカッターで作ったようなコンテンツは納品されないはずです。

「検索語句からニーズを汲み取って~」というけど、キーワードから意図はわからない

増渕:
SEOに取り組んでいる企業を見ると、まだ検索クエリからニーズを汲み取って~という手順を選んでいるところが多いです。この方法はどこが問題なのですか?


渡辺:
まず歴史についてお話しましょう。検索クエリからニーズを汲み取ってコンテンツに反映させるという手順は、2000年代からポピュラーな手法です。当時は、Google検索からユーザーがページに来訪した時、検索クエリのリファラ(訪問時に検索ユーザーが使用した検索語句)を取得することができたので、検索クエリをロングテールの図で表したとき、ロングテールの先の先まで参照することができました(使用するWeb解析ツールが処理できる限り)。このロングテールのクエリと、実際に訪問したページのコンテンツの組み合わせから、ある程度、検索意図を推定することが可能でした。ロングテールのクエリは5語以上の単語の組み合わせや自然文で記されたユニークな検索語句が多いため、そこに閲覧したページと行動履歴データを組み合わせると第三者が見ても目的が推定しやすかったのです。

しかし2011年にGoogleが訪問先ページにそのリファラ情報を渡さないように仕様を変更したため、検索語句のロングテールの全体を把握することが不可能になりました。その検索クエリ情報を代替するために活用されはじめたのが、GSCとGoogleが広告主向けに提供しているキーワードプランナーのデータです。

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渡辺:
検索リファラが取得できなくなったから代替として使っている点に注意が必要です。GSCもキーワードプランナーも、ロングテールの図で表せばショートヘッド(検索数が多い、頭のほう)と一部のミドルの検索語句しか参照できません。しかしコンテンツ制作に活かすために必要だったデータはロングテール(個々の検索数は少ないがバリエーションが多い、しっぽのほう)です。

こうした歴史的背景を理解していれば、現在の問題点も自ずと明らかになります。要は、検索語句のニーズを紐解いて~といっても、それを紐解くための十分な情報がそもそもないんです。


増渕:
キーワードプランナーは月間検索ボリュームが少なめのキーワードも表示しているように見えますが、それでも不十分なのですか。


渡辺:
あれは広告主が活用することを前提に提供されているデータなので、一定値以下のデータは表示されないという制約があります。たとえば先ほどあげた「語学留学」を例にとると、それを含むキーワード一覧を見ても「国別で探している」ことと「費用」と「持ち物」を気にする人がいることはわかりますが、それだけわかってもしょうがないんですよね。この程度の情報なら検索クエリを起点にしなくても容易に想像できる事柄です。

現実には、TwitterやInstagram、YouTubeでは視覚化されないけれど検索チャネルだからこそ存在する特有のニーズは存在するはずなんです。しかし、少なくともGoogleやBing、サードパーティーが提供する検索キーワードデータからそこを探る方法はありません。

もちろん、まったく知識がない状態からスタートする手がかりとしては有用なのです。ただし、「知識のない人間」がやろうとしていることが間違っているともいえます。


増渕:
つまりひとつ目の問題は、検索キーワードデータはコンテンツ制作において私たちが考えているほど有用なものではないということですね。他にどんな問題点があるのでしょうか。


渡辺:
ふたつ目の理由として、こうしたキーワードデータは世界中の誰もが参照できる情報です。あなたが閲覧できるということは、同業他者すべての担当者も同じ情報にアクセスできるのです。そしてひとつ目で触れたように得られる情報も程度が知れている。したがって、コンテンツが全くない状態からスタートしたらそれなりに成果も見えてくるでしょうが(皆が同じようなコンテンツを量産しつづけるので)飽和状態となり、誰も閲覧しなくなり、成果にもつながらなくなってくる問題があります。

SEOを切り口にすると、どうしても私たち人間は楽をしたくなるじゃないですか(笑)。みんな同じように考えるから、単に他のどこかのWebサイトを真似たような、文章は書いてあるけれど誰の役にたっているのかわからない(SQRGでいうbeneficial purposeが失われた)ページが出来上がってしまう。


増渕:なるほど。そういう楽な考えに流されないためにも、そしてGoogleに評価してもらうためにも、エクスペリエンスを考えなければならないということですね。今日はありがとうございました


<インタビュアープロフィール>
プロフィール用写真_増渕

増渕 佑美

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューションビジネスUnitインバウンドマーケティングDivに所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること

 

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