失敗しない企業DXはいかにして可能になるのか? 【前編】――変革の進む企業が実践していること

2021.09.30

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この記事の著者

米田 吉宏

ユナイテッド株式会社
執行役員

慶應義塾大学経済学部卒業後、 2010年株式会社電通入社。2013年ボストンコンサルティンググループ入社後、主に通信・メディア・テクノロジー領域の経営戦略策定、新規事業開発、営業戦略、組織戦略等を担当。プロジェクトリーダーとして従事した後、2019年3月ユナイテッド株式会社執行役員に就任(現任)。DXソリューションの立案/推進と、全社戦略/組織強化を担当。

ユナイテッド株式会社
執行役員

昨今DX化の波が押し寄せ、早急にデジタル技術やツールについての情報をキャッチアップし、導入しなければと焦りを感じている企業や担当者は少なくないのではないでしょうか。ただ、実際にデジタルツールなどを導入し、長期的に浸透させていくためには、腰を据えた議論と本質的な課題設定が求められます。

では、企業におけるDXはどのように進めるべきなのでしょうか。今回は、ユナイテッド株式会社 コンサルティング部門のマネージャー層が集まり、DXの潮流と実際のクライアントの動きについてディスカッションをおこないました。DXが進んでいる企業の特徴、推進にあたって直面する壁など、ケーススタディとコンサルティングの肌感を踏まえてご紹介します。

スピーカー

55784032815_01岡部 健二
ユナイテッド株式会社Vice President
2007年ngi mobile株式会社(現ユナイテッド株式会社)入社。モバイル広告事業にて、大手メディア企業や大手コンテンツプロバイダー企業のマーケティングに従事し、2012年よりDSP事業部事業部長に就任。2018年アプリマーケティング本部長、ユナイテッド執行役員を経て現任


55784032815_02関 彩
ユナイテッド株式会社Vice President
6 年間Bain & Companyにて、全社成長戦略の立案や複数のM&A 案件、新規事業創出案件等に取り組む。その後ヘアケア商材メーカーにて経営企画部長として従事した後、2020年より当社事業戦略室長


55784032815_03松田 和也
ユナイテッド株式会社Strategy Lead
DNVにてエネルギー領域の技術・リスクのコンサルティングに従事後、アクセンチュアにて多業種のDX戦略策定・新規事業創出・JV立ち上げ、新規事業戦略策定等に取り組む。2021年より当社Strategy Lead



55784032815_04山田 祐也
ユナイテッド株式会社Strategy Lead
2018年入社。大手出版社や大手広告代理店等の営業支援戦略に取り組む。アプリマーケティング本部マネージャーを経て、現任

 

 

DX時代における市場と企業の変化

関:
つい2、3年前までは「CRMやマーケティングオートメーションツールを活用している」というと、先進企業として数えられました。ところが昨今では多くの企業、複雑性の高い大企業でも導入がはじまっていると感じます。BtoB、BtoCにかかわらず、1、2年先には、これらが企業の標準装備になっていくのではないでしょうか。

山田:
旧来の営業をしていた業界でも、オウンドメディアを持ってリードを獲得するといった動きがはじまっています。僕は出版社におけるデジタルマーケティングとそれに紐づく営業活動の効率化を目指すプロジェクトに参画したことがあります。

それまでその出版社では、広告主を集めるときに、駅でいい広告を見つけ、その企業の電話番号を調べて連絡するといったアナログな営業活動をしていました。それはリードの拡大範囲が限られ非効率だということで、リード獲得からナーチャリング、インサイドセールスといったデジタルマーケティングの戦略を立て、その中でオウンドメディアの立ち位置と果たすべき役割を定義し、ワイヤーフレームやデザインに落とし込んでいきました。

岡部:
僕がかかわってきたインフラ業界、エネルギー企業のマーケティングでも、同様の動きがあります。コロナをきっかけに、対面接触が疎まれたり人流が少なくなったりして、街のサービスショップが営業しにくい。また、ガスや電気が自由化され、電気事業者のガス事業への参入、ガス事業者の電気事業への参入、あるいは通信キャリアといった異業種からの参入も可能になりました。

このような環境の中で、昔ながらのチャネルでマーケティングをしていたエネルギー企業は、改めてマーケティングのあり方を考えざるを得ない状況に置かれています。そこで、デジタルに大きく舵を切る施策を一緒に考えていきました。結果として、コロナを契機にデジタル活用の機運が非常に高まっていると思います。

松田:
岡部さんがおっしゃったように、業界の壁がなくなってきていることは最近よく感じます。これまでは電力会社は電力事業、ガス会社はガス事業に専念していましたが、これからは電力会社として培ってきたケイパビリティを転用して何ができるかを考え実装していく必要が出てきています。

例えば、電力会社やガス会社は地域の個人・法人のお客様を幅広く持っています。そのケイパビリティを利用し、高齢者見守りサービスをはじめた企業もあります。常識にとらわれずにいろいろな事業機会を模索し、実装までできる社会になっているということです。

その流れもあり、最近ではデジタルでできることを企業が冷静に見極められるようになっています。「AIで全ての営業を無人化しましょう」といった無茶な相談はなくなり、地に足のついた動きが出てきていると感じます。

DXが進む企業は、変革をどう進めている?

松田:
実際に変革が進んでいる企業としては、製薬会社があります。薬をつくるときには、その症状に効く成分が何なのかを宝探しのようにいろいろ分析し続けるプロセスがあります。そしてそこはデジタルですぐに加速できる部分です。だから製薬業界はデジタルの導入が早いのです。

とはいえ、これまでのR&Dのプロセスを大きく変えるとなると、現場の反発は免れません。そういう場合、例えばCDO(チーフデジタルオフィサー)という形で経営層レベルにデジタルの責任者を据えて、その下にデジタル推進組織を作っている会社もあります。会社としてしっかりお金と権限を持たせることで、ありがちな現場の反発を乗り越えるやり方です。デジタル化を推進するためには、このようにトップダウンで進めていくことがポイントのひとつなのではないでしょうか。

岡部:
僕はボトムアップとトップダウンがどっちも必要だと思っています。トップダウンだけだと現場の方のWillがなければうまくいかないですし、一方でボトムアップだけだと統率が取れません。

そしてトップダウンとボトムアップを両立させるうえで重要なのは、外部の人間がアドバイザリーという形で間に入ることではないでしょうか。その外部者が「何が論点なのか」「何を解決するのか」などをコンサルティングしながらプロジェクトを推進していく。そういうやり方をしないと、物事が進まないことが多いです。

山田:
そうですね。僕がDXを推進していくうえで大事になると思うのは「目的」です。「何を実現したいのか」という最初のWillから、そのプロセスを具体化するところまでは、社内だけでなく社外の人とディスカッションして固めていくというやり方が非常に有効です。

そうしてできた戦略をもとに、次は例えば分科会という形でブレイクダウンする。その分科会自体は社内で進めていくものの、コンサルタントがPMO的な役割を担い、進捗報告を受けながら方向性を確認したり、追加で議論しなければならない論点を取り出したりする。このような進め方は、ひとつの例として挙げられますね。

DX推進にあたって企業が直面している壁

関:
先ほど松田さんがおっしゃったように、デジタル技術が普及して、かなり異業種間の事業のしみ出しが起きています。企業目線で考えると、これは新規事業の開発が増えていくということです。それに伴って私たちにも新規事業のご相談が増えています。

ただ、新規事業開発はうまくいく会社とそうでない会社がかなりはっきり分かれます。理由としては、業界間の参入障壁は低くなっているものの、自分たちのアセットを生かせて、かつ、きちんと売上を作れる領域はなかなか見つけるのが難しいことが挙げられます。新規事業を軌道に乗せる難易度がかなり高いのです。

特に、新規事業に慣れていない企業だと、「小さくはじめて大きく育てる」の鉄則から外れ、しっかり候補案を出し切らないまま手軽なものからはじめてしまい、そのまま事業が潰れてしまうことも少なくありません。

松田:
僕は「人」が壁になっていると思います。デジタル技術はすごいスピードで進んでいますが、それと同じくらいのスピードで順応している人は本当に稀です。デジタル化でどんどんできることが増えても、それを使って事業ができるかどうかは「人」次第。事業をする人がデジタル技術をキャッチアップできていないと、その人自身がボトルネックになって進まない。これは多くの会社でありうるケースです。

関:
私も同じことを思っています。経営者の方は、新しいサービスや戦略をつくり、実行したいとおっしゃいますが、そこから実際に「サービスをどうユーザーに告知するか」「どう展開していくか」という“ハウ”の話になった瞬間、スピード感が落ちたり、時代を捉えたユーザー体験を提供できなかったりします。

それだと、たとえ私たちがサービス立ち上げまでの段階を支援しても、その後崩壊してしまう可能性は少なくない。だからこそ私たちは戦略立案から実行、その後のグロースハック部分まで一貫して支援したいですし、その必要性をトップの方が感じていただけるといいなと思います。

岡部:
「人」というのは僕も感じるところです。コロナによって、これまでDXが急務ではなかった企業にも急激にデジタルの知見が必要になり、企業は急ピッチで知見をためていっています。ただ、もともとデジタルに力を入れてこなかった人たちがいきなりキャッチアップできるかというと、限界があります。

また、組織上の問題点もあるのではないでしょうか。本来であれば、企業の全体戦略の中でデジタル活用戦略を考えていくべきですが、部署ごとに部分最適で考えてしまうことも多く、なかなか全体での動きが固まらないケースがあるなと感じています。

松田:
デジタルは、局所的に小さくはじめることもできれば、全社的にデジタルに寄せることもできて、自由度が高いです。投資額としても、100万程度からのスモールスタートもあれば、何十億かけてバリバリ変革していくこともできる。だからこそ、「どこまでアクセルを踏むか」というのが企業にとって難しいポイントだと思います。

多くの企業で「ちょっとやってみよう」というトライはしているのですが、そこからもう1~2桁大きな投資に踏み込もうという決断がなかなかできない。決定が滞る原因は、経営資源の「モノ」であるデジタル技術がものすごく進化している一方で、「ヒト」と「カネ」がついていけていないことだと思います。

企業の課題感としては、これまで「デジタルで何ができるのか?」といったフィジビリティスタディーだったところから少し進んで、「実際の経営でいかにヒトやカネをデジタルに投下できるか」というところが挙がってきている段階です。

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