バーチャルプロダクション撮影によって広がる“科学する動画広告“の可能性

2021.10.12

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最先端の映像撮影技術として注目されるバーチャルプロダクション。この技術を用いることで動画広告にどのような利点があるのでしょうか。実際にバーチャルプロダクションを使用し、動画広告を制作したからこそ分かった、バーチャルプロダクションの可能性や制作上の注意点を紹介します。

バーチャルプロダクションとは

従来の合成撮影は、グリーンバックという緑色の背景に編集工程で映像を合成するクロマキー合成という手法を用いていました。対してバーチャルプロダクションとは、バーチャル空間で撮影する手法です。巨大なディスプレイに3DCGで作った背景を表示し撮影をおこないます。この背景は、カメラの位置情報やレンズの焦点距離と結び付いているため、カメラの動きとシンクロして動きます。その結果、CG内で撮影しているような効果を得ることができます。

モーションキャプチャー(現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術)を、「人間がCG世界に入り込む手段」とするなら、バーチャルプロダクションは「CGを現実に具現化する技術」だといえます。

技術の詳細は、DIGIFUL内別記事『ロケも合成も不要。最新のバーチャル撮影技術で、動画広告の最適解を“科学する“』をご覧ください。

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マーケティング視点で考えるバーチャルプロダクションの4つのメリット

次に、バーチャルプロダクションを用いて撮影をおこなうメリットをマーケティング視点からご説明します。

メリット1:商品の魅力を引き出す

バーチャルプロダクションは、今まで合成で処理していたものを実写で実現します。例えば、透明なガラスの中や車のボディに周りの景色が写り込む様子やを撮影することが可能です。実写でしかできなかった繊細な表現が可能になることで、商品の魅力を最大限に引き出すことができます。

(図1:車のボディに背景が映り込む様子)

メリット2:コストダウン

今まで費用がかかっていた合成のコストが不要になります。例えば、髪の毛などをクロマキー合成で切り抜く際、時間や費用が膨大にかかっていました。合成や色調整、テロップの挿入をおこなうオンライン編集は、撮影後の工程で一番費用のかかる作業で、予算を占める割合も少なくありませんでした。バーチャルプロダクションでの撮影は、これらの撮影完了後の作業の費用が不要になります。さらに、屋内での撮影のため天候に左右されず、撮影予備日を確保する費用も削減できます。

メリット3:ベストな表現を究極まで追求できる

企業や商品を魅力的に表現している良質な企画を、撮影の問題で諦めざるを得ないという状況は頻繁に起きます。 例えば、理想のロケ地での撮影や高層階表現(上空の飛行機からの映像や、高層ビルの外からの映像など)は、実際に訪れて撮影することや、撮影許可を得ることが難しいことも多いです。しかし、バーチャルプロダクションなら、ドローンやヘリコプターで撮影したような映像表現を簡単に実現できますし、撮影許可不要で理想のロケ地を自由自在に作ることができるのです。

また、グリーンバックでの撮影に比べ、背景が完成時に近いため役者が演技しやすいという点や、スタント撮影など実写では危険が伴うアクションも安全に撮影することができる点も大きなメリットです。

他にも、夕景など一瞬しかないシーンを納得のいくまで撮影したり、子役が出演可能な時間に夜シーンの撮影ができたり、室内空間で撮影を行うため、新車など機密性の高いものの撮影にも適しています。

このように企画の実現性を高めることで、動画の質を格段に向上させることができます。

(図2:バーチャルプロダクション撮影現場のイメージ)

メリット4:これまであきらめていたクリエイティブ検証ができる

配信上でのABテストなどの検証を繰り返し、クリエイティブの勝ちパターンを見つけて成果を出していくことが重要な動画広告ですが、この検証をおこなう点においてもバーチャルプロダクションは有効です。30分程度の準備で背景の入れ替えが可能なので、情景のみのABテストをおこなうなど、これまではスケジュールや予算の関係上あきらめていた画の検証も容易になります。

例えば、同じ食事のシーンでも大自然をバックにしたほうがいいのか、都会の高層階をイメージさせたほうがいいのか、セットチェンジで何パターンも作って試すことができます。

このように勝ちクリエイティブを導き出すツールとして非常に可能性があります。

コロナ時代におけるバーチャルプロダクションの重要性

コロナ禍において、撮影は多くの制約を受けています。海外ロケなどが難しくなったり、予算を圧縮せざるを得なかったり、大人数での撮影が制限されたり…。だからこそ、理想的な背景をCGで作り出すことや、背景のみを最低限の人数でロケ撮影した上でバーチャルプロダクション撮影により人物や商品と合わせるなど、制約を乗り越えるニューノーマルな撮影スタイルとして非常に可能性のある技術です。

バーチャルプロダクション使用上の注意点

これまでバーチャルプロダクションの利をお伝えしてきましたが、実際に当社で広告制作に利用した知見から得られた使用上の注意点もお伝えします。

注意点1:背景選定の難しさ

バーチャルプロダクションの背景には静止画も使用できるのですが、細かい条件がたくさんあり、その条件に当てはまるものを探さなければなりません。例えば、画像の画素数だけでなく、カメラの寄り引きに合ったアングルのものでなければなりません。このような背景選びなどの下準備が撮影全体の質に大きく関わるため、専門的な知識を要するスタッフの存在が欠かせません。

注意点2:カメラワークの難しさ

カメラとバーチャルプロダクションで映し出す背景の動きが同期しているため、カメラの動きの自由度が高くありません。そのため、経験豊富な撮影スタッフであれば問題ないのですが、はじめてバーチャルプロダクションを使う際には入念なカメラテストが必要になります。

まとめ

実現不可能だったものを可能にするバーチャルプロダクション。バーチャルプロダクションは、コストカットや表現追求をできるツールであり、コロナ禍でのニューノーマルとしても期待できます。加えて、ロケ代替品ではなく、勝ちクリエイティブを見出すツールとして活用することが、これからの動画クリエイティブの可能性を大いに広げると考えています。興味がある方はぜひ一度アイレップへお問い合わせください。

この記事の著者

古澤 重明

▼プロフィール
映像ディレクター・プロデューサーとして、家電、飲料、通信、金融、エンタメ、不動産、医薬品など幅広いナショナルクライアントの映像制作を担当。2019年アイレップに入社。映像クリエイティブ力を武器にコミュニケーション施策の企画立案から実装までを行う。「表現ではなく、心を動かす仕組みをつくる」がモットー。3歳の双子の父。  
▼趣味
レコード収集、公園巡り

▼プロフィール
映像ディレクター・プロデューサー...

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