データ活用のために知っておきたい計測パラメータ管理とValue track

2021.12.16

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高い理想を実現するためには実行可能なオペレーションの設計が必要です。運用型広告のデータ活用は長く注目される分野ですが、それを実現するための必要な要件のひとつである計測パラメータの構造設計は、運用型広告の関係者でも多くの人が苦手としています。本記事では、その重要性とあるべき設計を解説します。

なぜデータ活用のために計測パラメータ管理が重要なのか

さまざまな媒体を施策に用いるデジタルマーケティングにおいて、媒体別の成果をどのように比較されているでしょうか。媒体が提供する効果測定タグの仕様は、それぞれの媒体で少しずつ異なっています。異なる定義で測られた数字を横並びに評価することはできないため、ほとんどの場合、Google AnalyticsやAdobe Analyticsといった、外部計測ツールを利用されているかと思います。また、近年では、広告効果の統一的な測定をおこなうのみにとどまらず、獲得した新規会員が将来の売上につながっているかなど、外部計測ツールのみで測定可能な後工程情報を反映し、CVの質を重視した運用をおこないたいというご要望をいただくことも多くなってきました。

運用型広告では、やるべきことを正しくおこなって、定期的な改善活動に入ってしばらくすると、コンバージョン(以下CV)数のジャンプアップを期待することは難しい段階に入ります。運用が成熟した段階では、CV数よりもCVの質を追うことが、より事業成果にインパクトする施策になる場合があります。例えば、単純に新規会員の獲得数を追っていたとすれば、獲得数改善が頭打ちになったとしても、その後の購買頻度や、購入単価に注目して施策を実施することで、最終的な目標である売上拡大を主軸としたあらたな改善方法が見えてくる場合があります。

一方で、各広告媒体が提供する計測タグでの計測には限界があり、こうした後工程データを利用した施策立案にあたっては、外部計測と広告データを連結して分析できる基盤を整える必要があります。この連結にはさまざまな方法が存在しますが、「必要になったタイミングで」「手動で」といった対応を選んでしまうと、リアルタイムのモニタリングが不可能になり、成果認識の意思疎通が難しくなります。事業にインパクトする分析・施策立案を実行するためには、ここの自動化はマストであり、些末なオペレーションに煩わされる環境を一掃してこそ、大事なことに注力することができます。

こうしたデータ連携基盤構築に重要な要素のひとつが計測パラメータのルール管理です。一方で、パラメータ管理に関しては、問題を抱えるアカウントがほとんどであると認識していることから、本記事では間違ったパラメータ管理による問題とあるべき姿について紹介します。

誤ったパラメータ管理が引き起こす問題

ここに記載する問題は、実際に過去担当させていただいたお客様で起きていた問題の一部です。もし、該当するようなルール設計になっている場合、後半で紹介する管理方法を採用いただくことで、広告成果を改善できる可能性があります。

なんとなく、媒体単位でパラメータを分割している

Google・Yahoo!・Facebookなど、媒体別の計測をおこなっているパターンです。運用における施策判断で重要になってくるのは、媒体計測と外部計測の乖離率です。運用型広告は、ほとんどの場合、媒体CVを目的数値とした機械学習による最適化機能を持っています。そのため、媒体CVと最終計測CVの乖離率の異なる広告を、同一の予算で運用していると、媒体CVは増えるが、実際のKPIとして利用している外部計測CVの値が増えないターゲティングに最適化される、ということが起こりえます。この乖離の要因を調べて対策すること、乖離が解消できない領域においては、予算やターゲットのCPAといった目標を分割して与えて媒体の自動最適化に制御を加えることが運用レバーとなりますが、乖離率が確認できる粒度が粗いと、運用に活かせません。

媒体のデフォルトの計測定義は、(ITP等で実質1日になっている場合もありますが)その広告をクリックしてから30日以内にCVに至ったユーザーをカウントしている場合がほとんどです。実際にはクリック後に離脱し、最終接触が自然流入や、別の広告媒体であった場合もカウントされます。この仕様から、BIGワードなど、購買意思が定まっていない検索をしているユーザー、ブロードリーチでのディスプレイ広告など、接する対象が拾いターゲティングにおいて、媒体CVと全広告を横断したラストクリックで測定できる外部計測CVの乖離率は高くなりやすい傾向があります。ターゲティング粒度でKPI指標を確認できない状態では、こうした問題を解決することはできません。

すべての媒体で、最小粒度で静的にパラメータを発番している

それでは、最も細かい粒度で発番している場合はどうでしょうか。特定の媒体においては最適解になり得ますが、Google・Yahoo!・Facebookにおいても同様の対応をしているとすれば、それは最適とは言えません。まず、Google・Yahoo!・Facebookについては、動的発番を利用することができます。こちらに関しては、次項で詳しく解説します。

次に、管理コストの問題があります。こちらは一般的なお話になりますが、パラメータを静的発番する場合、どのターゲット・広告のURLに対してどのパラメータを付与したのか、1:1対応させるための管理表が必要になります。通常の入稿作業に加えて、過去入稿したパラメータと重複したパラメータを付与しないための発番管理が必要になります。これは頻繁にクリエイティブを差し替える必要のあるソーシャル広告や、多数のキーワード(以下KW)を管理し、随時追加・除外を行っていく必要のある検索連動型広告を運用する上で足かせになります。人間が作業に介在することになるので、重複発番や発番漏れなど、トラブルの温床にもなります。

パラメータを付与する粒度が時々の事情で異なり、一定ではない

同じアカウントの中で、一部は広告単位、一部はKW単位といった付与がなされているパターンです。「発番するパラメータの数が増えると大変そうだから、普段はキャンペーン単位で発番しているが、特定の訴求だけクリエイティブの分析がやりたいので広告単位で付与する」という発想があったのかもしれません。しかしながら、ここまで挙げた例の中で最も問題になるのがこのパターンです。まず、発番管理が複雑になります。どのルールに該当するキャンペーンか判断して発番粒度を決める必要があるので、ルールの数だけ管理表が必要になります。また、データ連携時の自動化が難しくなります。人間による管理と同様に、集計を自動化するためのシステムにおいてもパターンによって処理を分岐させる必要があります。エラー検知も場合分けの必要によって複雑になり、まず一般に提供される機能での対応は難しいでしょう。その場合、カスタム開発が必要になりますが、パラメータ管理は、発番されるパラメータの数よりも管理されるルールの数が管理負荷を決めます。20000のパラメータをKW単位で発番するよりも、180のパラメータをKW単位で発番し、20のパラメータを広告単位で発番されているという状態の方が、より問題になることがあるのです。

また、そもそもの粒度が異なっている場合、特定の分析は特定のカテゴリ、キャンペーンでしか実施できない、という状況に陥ります。仮に現時点で分析不要なキャンペーンが混ざっているとしても、パラメータにおいてはルール分岐をおこなわない方が分析の柔軟性が向上します。

パラメータ発番を不要にする”Value trackパラメータ"

どうしたらこういった問題を解消し、最小限の労力で最大限柔軟な分析を可能にするパラメータ管理ができるでしょうか。広告主・代理店・ツールベンダーを問わず、計測パラメータに関わる全ての方に知っていただきたいのが、”Value trackパラメータ"の概念です。概念とお伝えしたのは、媒体が変わると機能としての呼称が異なるためです。ここでは、観測する限り最も早くから柔軟な機能を提供してくださったGoogle社の呼称に合わせ、Value trackパラメータで統一したいと思います。

Value trackパラメータとはなにか

Value trackパラメータとは、一言で言ってしまえば、媒体が動的発番するパラメータです。URLに挿入された特定の情報を取得する指示文言を、広告掲載時に媒体側で自動的に対象情報に変換してくれる仕組みであり、取得できる情報はキャンペーンのIDやクリエイティブのID、キーワードのIDなどさまざまです。

静的発番、動的発番の理解を助けるために例え話をします。静的発番については、ライブチケットを想像してみてください。人気のライブチケットには、チケットの番号や購入者の氏名が印字されています。予めIDが発番された状態でチケットを配ることで、実際に利用されたチケットはどれか、購入者本人であったかどうか、トラッキングされています。一方、動的発番ですが、これは学校のテストを想像してみてください。先生手作りのテストを受ける時、答案用紙に氏名は印字されているでしょうか?おそらくは「氏名」と書かれた空欄があり、ここに学生が自分自身で名前を記入することが求められています。教員側は、記入された氏名を見て、誰が何点だったか記録を付けることができます。これが、動的発番です。

具体例を挙げましょう。Googleでは、{campaignid}という、Value trackが利用可能です。これは、URL中の{campaignid}という文字列を、キャンペーンIDで差し替えてくださいという指示文言で、テストの例で言えば「氏名」の代わりに「キャンペーンID」と書いてある空欄が記載されているようなものです。このValue trackを、例えばAdobe Analytics計測において利用するとします。利用時は、広告を識別するパラメータ名である「cid=」以降に、値として付与します。LPのURLがirep.co.jpであった場合、入稿はirep.co.jp?cid={campaignid}となります。キャンペーンIDは、キャンペーン入稿時に媒体側で自動付与されるIDですから、管理画面で確認・出力することが可能です。キャプチャのキャンペーンのIDは9603229849だったので、実際に掲載されるURLはirep.co.jp?cid=9603229849となります。

(図1:valuetrackパラメータの入稿と掲載URL)

ここで注目すべきは2点です。まず、人間による静的な発番が不要になることです。キャンペーンが入稿された時点でIDは自動発行されます。キャンペーンとIDは管理画面から出力できるため、この時点でパラメータ管理表が完成しているのと同義であり、個別の管理表作成は不要になります。次に、パラメータの入稿が不要になることです。Value trackを利用してキャンペーン単位の発番をおこなう場合、すべてのURL末尾に?cid={campaignid}という共通文言を付与すれば入稿時の対応は終わります。Googleの場合、トラッキングテンプレートやURLサフィックスが、LPの遷移先を指定するfinal URLとは別に存在しているため、共通文言の付与が必要な場合はアカウント単位での設定が可能です。アカウントのURLオプションから、最終ページURLのサフィックスに?cid={campaignid}を開設時に一度付与すれば、以降の広告入稿は遷移先URLを入力するだけとなり、パラメータ付与は不要になります。発番と入稿の2つのタイミングで人間の作業が消滅するため、ヒューマンエラー対策にも強烈な効果があります。

なぜ今Value trackパラメータなのか

大変便利なValue trackパラメータですが、その歴史は古く、直近のアップデートではありません。Adobe media managerなど、一部の3rd partyツールでは、少なくとも8年前からデータ連携の自動化にこの機能が利用されていました。一方で、今ご紹介したいのには3つ理由があります。

1点目は、活用できるツールが広がったことです。Value trackパラメータは特性上、ツール側自動発番になるリダイレクト計測をおこなっている場合には、利用できませんでした。しかし、3rd party cookieが規制されたことで、AD EBiSやWebAntennaなど、過去利用できなかったツールの多くが、リダイレクトサーバ上でCookie付与をおこなう方式を廃止し、URLパラメータを起点に遷移先でCookieを付与するダイレクト計測に対応しました。どんなツールにおいても、利用時には最大文字数など詳細仕様の確認が必要ですが、原理的にはほぼすべてのツールで利用可能といっても過言ではない環境が整いつつあるため、活用いただける範囲が増えています。

2点目は、Google・Yahoo!におけるトラッキングテンプレートの導入です。以前には、パラメータを付与できる項目はLPURLのみであったため、同一文言であったとしても入稿時すべてのURLにパラメータを付与する必要がありました。これが、4年前のアップデートでトラッキングテンプレートが登場し、同一文言を付与する場合、入稿の必要がなくなりました。また、これらのアップデートを期に、Yahoo!でも{targetid}が対応するなど、関連する仕様アップデートがあり、一段と使いやすくなりました。2021年からは、YDAでもこの方式が利用可能になりました。

最後は、BIツールを利用して広告効果をダッシュボード化したいと希望されるお客様が増えていることです。代理店では、レポートオペレーションは提供サービスの品質に直結するため、古くからAPI開発やBIの利用を通して分析・集計の自動化をおこなう努力がなされてきましたが、成熟した運用では前述の通り後工程データが重要になってくることもあり、独自に分析環境の構築を希望されるお客様が増えています。広告主からダッシュボード構築を依頼されるシステムコンサルタントの方、広告主側で勤務されるエンジニアの方など、過去に運用型広告の効果可視化に直接的な関わりのなかった立場の方々が、データ連携に苦労される様子を目撃し、こういった領域に関しても正しく情報発信をおこなうことが社会益であろうと感じました。もちろん、代理店としてサポート対応している領域ではありますが、是非、当社のお客様のみならず、お困りの方に届いてほしいと願っています。

Value trackが利用できる媒体

現在、当社にて存在を確認し、動作検証までおこなっているのはGoogle・Yahoo!・Facebookです。それぞれのヘルプページのリンクを以下に記載します。Yahoo!に関しては、githubのAPIヘルプも存在しますが、広告ヘルプの方がより直近の仕様が反映されているため、ここではそちらのリンクを掲載します。また、媒体のヘルプページに関してはURLが変更やページ自体の削除が予告なく実施される場合があります。本記事は2021年11月時点の情報ということを予めご了承ください。

Google:Value trackパラメータについて
https://support.google.com/google-ads/answer/2375447?hl=ja

Yahoo!:トラッキング用パラメータについて
https://ads-help.yahoo.co.jp/yahooads/ss/articledetail?lan=ja&aid=1061

Facebook:URLダイナミックパラメータの仕様
https://ja-jp.facebook.com/business/help/2360940870872492

”Value trackパラメータ"を利用した具体的なパラメータ管理方法

ここからは、Value trackパラメータを利用した具体的なパラメータ管理方法についてお伝えしたいと思います。ヘルプを読んでいただければご理解いただける通り、Value trackパラメータでは極めて多様なデータ取得が可能なのですが、深く考えずとも最低限一般的に必要となる情報が取得可能となるパラメータ付与方法について解説します。

Adobe Analyticsであれば、これをつける

Yahoo!・Googleの検索連動型広告およびGDNに関してはトラッキングテンプレートに以下のような指定をおこなってください。(“cid=”部分に関しては、計測で利用しているパラメータ名を指定してください)

{lpurl}?cid=[任意の媒体識別パラメータ]_ac_[アカウントID]_cm_{campaignid}_gp_{adgroupid}_cr_{creative}_kw_{targetid}_dv_{device}_sl_{feeditemid}

  • [任意の媒体識別パラメータ]
     Yahoo!、Googleなど媒体を指定する識別子を自由に定義してください。
  • [アカウントID]
    アカウント特定のため、対象アカウントのIDを手動入力してください。
  • {campaignid}
    キャンペーンIDが自動取得されます。Yahoo!はキャンペーンIDとキャンペーントラッキングIDの2種のIDがありますが、ここで取得できるのはキャンペーントラッキングIDになります。
  • {adgroupid}
    グループのIDが自動取得されます。キャンペーンと同様、Yahoo!で取得できるのはトラッキングIDです。
  • {creative}
    クリエイティブのIDが取得されます。
  • {targetid}
    KW文字列に対応したIDや、DSAのターゲットID、ユーザーリストIDが取得されます。RLSA等を設定している場合には、複数の値が取得されます。
  • {device}
    デバイスが取得できます。解析ツールはパラメータを振らずともデバイス情報を取得可能かと思いますが、ツール側でのデバイス判別が分割粒度等の問題で媒体計測と一致しない場合があります。広告情報との紐付けやすさの観点で、デバイス情報もパラメータで取得することを推奨します。
  • {feeditemid}
    クリックされたサイトリンクなど、表示オプションのIDが取得できます。

 

YDAは検索連動型広告と利用できるValue trackの種類が異なり、利用可能なものに限定する必要があります。アカウントIDも“{account} ”のValue trackで取得可能である点が特殊です。推奨は以下になります。

{lpurl}?cid=[任意の媒体識別パラメータ]_ac_[アカウントID]_cm_{campaignid}_gp_{adgroupid}_cr_{creative}_kw_{targetid}_dv_{device}_sl_{feeditemid}

 

Facebookの推奨は以下になります。

cid=[任意の媒体識別パラメータ]_ac_[アカウントID]_cm_{{campaign.id}}_gp_{{adset.id}}_cr_{{ad.id}}_sn_{{site_source_name}}
  • {{campaign.id}}
    キャンペーンのIDが自動取得されます。
  • {{adset.id}}
    アドセットのIDが自動取得されます。
  • {{site_source_name}}
    InstagramとFacebook面を分割するネットワーク情報が取得できます。

Google Analyticsであれば、自動連携時のデフォルト項目に気をつけて

Adobe Analyticsを例に解説しましたが、Google Analyticsの場合も取得すべき項目自体は同じです。ただし、Google Analyticsを利用している場合には、Googleにおいては自動タグ連携することでパラメータ付与は不要になります。当社では、Google以外の媒体についてutm_contentを詳細粒度での計測に用いることが多くなっていますが、他チャネル計測への影響などを考えて設計する必要があるため、本記事では具体設定を割愛します。

なぜ複数のIDを利用するのか?

ここまでお付き合いいただいた方は、{targetid}だけつけておけばいいのではないか?と疑問を持たれたかもしれません。最終粒度で付与して積み上げれば、グループやキャンペーンの取得は不要なのではないかと思うのはもっともな疑問です。これは重要な問題なので、3点理由を解説します。ひとつは、IDの重複範囲が明文化されていないことです。当社では、経験則と媒体社とのコミュニケーションによってIDの重複範囲を確認していますが、campaignID、groupIDに関しては世界単位でユニーク、一方で、keywordIDに関してはkeyword文字列単位で重複する可能性があり、creativeIDはD&Eなど特殊設定下で重複する可能性があるというのが結論です。1アカウント内で重複しなければ重複が問題になることはほぼないのですが、今後の仕様変更に対するリスクヘッジもふまえ、トータルで確実にユニークになる構造を推奨しています。

ふたつ目は、メニューによって階層が異なることです。例えば、Googleのアプリキャンペーンはグループの概念がなく、パフォーマンス最大化キャンペーンにはターゲティングの階層がありません。targetIDを指定した時にブランクしか返さないメニューが仕様アップデートによって今後増える可能性もあるため、そうなった場合にもそれより上の粒度で計測できる工夫をしています。

みっつ目は、集計の合理化です。最小粒度だけではなく、グループやキャンペーン等、より上位階層での集計が必要な場合にも、常に最小粒度でデータを落とさなければならないのは合理的ではありません。データが細かくなれば、処理速度を上げるために機材の要求スペックが上がります。自動化するにしても、必要量のデータを必要なだけ抜き出せる構造にしておいた方が、負荷を抑えられます。構造的な集計を可能にすることで、例えばクリエイティブの成果を流入KW別に分析したいなどの要望が生じた際にも対応できます。

付与する情報の順番に意味はあるのか?

ルールが統一されており、情報が網羅されていれば、順番に関してはカスタマイズ可能です。また、メニューによっては特定のValue trackでブランクが帰ってくる場合や、ひとつのValue trackで複数の情報が戻る場合、その中に記号が含まれる場合などがあるため区切り文字としての「_」や次にくる情報を識別するための目印として、「cr」などの略号を利用していますが、こちらも、実現したい集計に合わせてカスタムいただくことに問題はありません。

一方で、パラメータの最大文字数にはご注意ください。解析ツールで取得できるパラメータは、例えばAdobe Analyticsでは1パラメータ名あたりパラメータ値は255バイトまでといった制限があります。基本的には収まるルールになっていますが、媒体側が返してくる値の桁数は保証されていません。将来的にオーバーする可能性も踏まえ、推奨ルールでは重要なものから順に記載するようにしています。また、ブラウザの最大URL文字数も影響します。過去、IEでは1025バイトでURLが省略されました。ユーザーの遷移後にURLの省略があると、省略された後半を取得することができません。ページURLがそもそも長い場合などには、ユーザー環境によってこのような事象が発生する恐れがあるので、省略されても大きく問題になりにくいものを後方に配置してください。

BI構築を担う開発者の方へ、補足の注意

余談になりますが、実はここまでに上げた注意事項は、媒体データの取り扱いに対しても同様です。APIでレポートを取得する際、KWレポートと広告レポート、キャンペーンレポートそれぞれの階層で取得すると、単純に処理が3回に分かれるため、開発者の方は、KWレポートを取得したらその足し上げで上位階層を表現したいと考えるかもしれません。しかしながら、それはおすすめしません。前述の通り、KW単位ではデータ取得できないメニューが新たに追加されたり、粒度によってAPI対応状況が異なったりという事象が、極めて頻繁に発生するからです。また、取得データが増えるほど、データ確定にかかる時間も増えますが、利用者側としては全体コストの進捗は朝一で確認したいが、KW単位のレポートであれば前日データの確定が昼過ぎになっても構わない、など、データの優先順位が別れていることも往々にしてあります。キャンペーンのデータは媒体側がエラーになることも少なく、安定して短時間での取得が可能な媒体がほとんどなので、階層別に取得データを分けておくことは、運用上のリスクヘッジにもなります。そのため、もしできる限り多様なデータを表現したいと要望を受けた場合、それぞれの粒度でデータ取得される構造にすることを強く推奨します。

まとめ

本記事では、運用型広告のデータをその他の事業データと紐付けて、運用の改善を図りたい場合に、計測パラメータの管理方法が極めて重要になることをお伝えしました。また、運用型広告の計測パラメータは、最小粒度単位分割を基本とし、特定の条件で付与のルールを分岐させないこと、Value trackパラメータが利用できる媒体では、Value trackパラメータを利用することを強く推奨します。大事なことに時間を使うために、足元のオペレーションに手をとられない環境を構築することは重要です。広告主の方のみならず、解析ツールベンダーやBI開発者の方、に本記事がお役に立てれば幸いです。

この記事の著者

黒岩 奈緒

株式会社アイレップ2012年入社。検索連動型広告の運用コンサルティングを中心に、大規模アカウントを多数担当。大量のデータを取り扱ってきた経験を元に、現在は顧客対応と並走して運用の自動化や標準化、情報流通の効率化による全社運用能力の向上を担っている。

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