EMOFUL #3:ファンアート文化から紐解くゲームブランディング

2021.12.23

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この記事の著者

エモーショナルエンジン

「Emotional Engine(エモーショナルエンジン)」とは、 ゲーム案件を中心にユーザー視点に基づいて「熱狂を科学する」プロジェクトチームです。 

ゲーム市場をはじめとしたレッドオーシャン化が進んでいる業界において、アイレップが得意としてきたロワーファネル(獲得領域)だけでは不十分な時代が訪れています。 ファンの愛着を醸成するミドルファネルからアッパーファネルの攻略と、そのファンの熱量を可視化することが重要になっていると考えます。 

そこで私たちは、施策を通じてファンの醸成をしていくミドルファネル攻略を主軸とした体制を整えました。 長年データマーケティングで培ってきた知見を活かして、プロダクトの特性やファンの属性を定量的に導き出して効果検証を行い、最適なクリエイティブをご提供します。

「Emotional Engine(エモーショナルエンジン)...

1 ファンアートにファンの熱量が表れる

ファンアートとは何か

ファンアートとは、他者が創作したキャラクターや、世界観などの作品を元にして制作した作品の総称です。「二次創作」と同じ意味であり、こちらのほうが聞き慣れている方も多いのではないでしょうか。基本的には、プロ・アマチュア含めファンアートを描くことで何らかの報酬を受け取っていないことが前提です。

筆者は、今まで多くのソーシャルゲームアプリをプレイしてきました。その中でも、原神やアークナイツ、FGOなどのタイトルについて、ファンアートを描いたことがあります。これらのタイトルは世間的にもファンアートが活発なタイトルとされています。筆者がこれまで複数のゲームアプリをプレイしてきた中で、ファンアートを描いたタイトルと描いていないタイトルとではいずれも愛着やプレイ頻度に大きな差はありません。では一体、どのような違いが筆者にファンアートを描かせたのでしょうか。この違いを軸に、ファンアート文化について考察していきます。

ファンアートを制作したタイトルは、どれも自分の好みに近く、深く共感できたもの

今まで自分がファンアートを創作してきたゲームアプリは、面白そうだと感じたことでプレイをしたり、現在もプレイし続けている作品です。動機の強弱はありますが、どれもインストールした時点での期待やワクワクは同程度でした。

ここまでは、ファンアートを創作してきたゲームアプリと、そうでないゲームアプリに客観的な差はありません。ではなぜ、ファンアートを描くタイトルとそうでないタイトルがあるのか。それは、キャラクターの可愛さや声など表面的な情報だけではなく、キャラクターの魅力の外にある、見えない部分の魅力に惹かれたからです。

ゲーム本編や各種SNS、テレビCMなど、さまざまな場面でコンテンツに触れる中で、ファンアートを創作してきたゲームアプリには自分の好みに刺さるポイントが、以下のように多種多様に散りばめられていました。

  • SNS公式アカウントやオウンドメディアにおける世界観設定やキャラの深堀り、それらの制作過程や意図など制作側の想い。
  • Twitterのハッシュタグを用いた、他のファンが制作したファンアートやスクリーンショットの投稿。
  • 公式生配信における、今後追加されるキャラクターやストーリーの情報公開やイベントの実施。
  • テレビCMやYouTube広告の高品質なアニメーション。

このようなコンテンツを通して作り手のこだわりを感じて同じキャラクターでも見え方が変わったりすることがあります。また、公式がファンの活動を受け取ってくれることが見えている安心感が、ファンアートを描く理由になることもあります。さらには、ゲーム内では見ることができないキャラクターの表情がCMで描かれることで、キャラクターの背景や、違う一面を垣間見ることができ、それを絵にしたいと感じることもあります。

このように、表面的な情報だけではわからないポイントで差がつき、ファンアートを作る理由が生まれることがあるのです。

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実体験

こちらは実際に自分が制作し、イラストコンテンストに投稿させていただいた「原神」のファンアートです。

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(図1:筆者自身が制作した「原神」ファンアート)

このファンアート制作のきっかけは、自分自身がゲームをプレイしている中で妄想していた、「よく使用するキャラクター(スタメン)全員を一画面に収めて見てみたい!」という強い想いでした。
しかし、実際にゲーム内でその妄想を実現することは難しく、どうしたら見ることができるのだろうと悶々としていました。

定期的に、ゲームの運営側から公式の新規イラストが公開されることもあるのですが、自分の理想のキャラクターが全員揃ったイラストが公開されることはほとんど期待できません。いつか出るかもしれないと願っていても、出ることのないままゲームがサービスを終了してしまう可能性もあります。

そこで、自分はこう考えました。

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該当タイトルのイラストコンテストがちょうど開催されることも後押しとなり、自分の妄想・理想を詰め込んでやろう、という想いを一枚の絵に凝縮させました。

他者から「いいね」をもらうためでもなく、イラストコンテストで受賞したいわけでもなく、ただ単純に自分の「好き」を詰め込むことだけを目的に、イメージに合った場所に愛着のあるキャラクターを入れ込み、自分が見たい絵を自分のためだけに描き上げるという最も尊い行為に、4日間の時間をつぎ込んだのです。

2 ファンアート=熱量の実数値で見るプロモーションの良し悪し

好きでなければ描かない

現在では、Twitterでトレンド入りする作品はファンアートが多く描かれる傾向があります。クリエイターにとっては閲覧数や反応をもらいやすいから、というのが大きな理由かと思います。しかし、少なくとも描きたいキャラクターや世界観に共感し、好きだからこそ描いているという根幹は変わらないと筆者は考えています。

また、ゲーム自体は未プレイでも、元々のキャラクターや世界観などコンテンツ自体のファンでファンアートを描いている方や、SNSで偶然見かけたファンアートをきっかけにゲームやコンテンツのファンになり、自分も描き始めた、という方も珍しくはありません。

インセンティブがあったとしても、投稿数が大きく増加するわけではない

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出典: ピクシブ株式会社 [pixiv] 【公式企画】コンテスト一覧

(図2:イラストコンテスト比較_4タイトル抽出 出典を元に筆者が作成)

インセンティブをつけても、投稿数が増えるわけではない。つまり、インセンティブの量で投稿数が左右されづらいファンアートは、ファンの熱量の実数値として信頼性があると言えるのではないでしょうか。また、作品のファンがどのような点に惹かれているかの傾向も、ファンアートに現れているのではないでしょうか。

キャラクターであればどのキャラクターが人気なのかが見えてくるでしょう。キャラクターが描かれている状況や服装、ストーリーなどから、そのタイトルにどのようなイメージをもっているのかも分かるかもしれません。また、そのファンアートに反応するファンを分析することで、ファン層を広げていくための糸口を見つけることも可能なのではないでしょうか。

ファンアートの多いタイトルに共通する要素

前述の通り、「好きになれるポイントの多さ」が決定的な要素だと考えています。

このポイントには、好みのキャラクターがいるかどうか、好きな世界観や設定であるか、というシンプルなことも含まれます。

どのゲームアプリタイトルも、ゲームの魅力となるポイントを効果的に伝えるために、各メディアやSNSアカウントを通して日々情報を発信しています。しかし発信するコンテンツ、発信するメディアによって、ユーザーに情報が効果的に伝わるケースと、そうでないケースがあるように感じます。

例えば、ゲームの最新情報やメンテナンスなどの運営情報、キャラクターや世界観を深堀りする漫画コンテンツなどは、どのタイトルでもスタンダードなコンテンツです。しかし、そこから更に深い魅力を発信するタイトルはそう多くはありません。

「原神」をはじめ、自分がファンアートを描いてきたタイトルは、制作側のこだわりや熱量、ゲームが出来上がるまでのエピソードなど、表面的ではない内側の魅力が数多く発信されていました。

  • 制作者の意図や制作時の裏側エピソード
  • とくにこだわっているキャラクターのモーション動画
  • キャラクターのバックグラウンドを描くアニメーションPV

ファンアートを描くようなクリエイティブタイプなユーザーにとっては、制作意図や裏側のエピソードなどを知ることでゲーム自体を自分ゴト化しやすく、よりゲームの世界に入り込んでしまうのかもしれません。

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自分がファンアートを描いていないタイトルに共通することのひとつに、公開されるコンテンツに事務的な内容が多いことがあげられます。

例えば、Webサイトや各SNSの掲載コンテンツにはキャラクタービジュアルやCM動画のみが掲載されている、Twitterアカウントからの発信はメンテナンスの開始終了の報告がメインなどです。

Twitterの投稿ひとつとっても、自分たちが作ったコンテンツが本当に好きなのだ、ということが伝わってくる、熱量を感じるコンテンツであるかどうかが、作品を好きになれるかのポイントのひとつであると感じます。

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=「自分のこと分かってるな」感

自分自身の体感ですが、共感できるポイントが多くなればなるほど、このタイトルやブランドの作り手は「自分のことをわかってるな」という感覚をもつことがあります。この感覚は、言うならば作品に対する信頼感や安心感、将来的な期待感が内包されたようなものでしょうか。

“自分の好きなことがことごとく用意されている”コンテンツやブランドが作り出す世界が、自分を満たしてくれるという期待感であふれる=ファンになる。そして、その世界に自分も関与したくなったり、自分がそのコンテンツで見てみたい表現を形にしたくなったとき、あるいはそれを他の人にも共有したいと思ったときに、ファンアートが生まれるのではないかと感じています。

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(図3:愛着を持つ流れ)

3 ゲームアプリのブランディングメリット

個別のタイトルのファンが会社のファンに

どのような人達が、どのような想いでこのゲームを作っているのか。そういった制作者の意図はゲーム自体や企業の人格形成、ブランディングにつながっていくと考えています。

各タイトルのブランディングを推進していくと、ゲームタイトルのファンだった方が、最終的に会社自体のファンになっていくケースが数多くあります。例えば「家族で楽しめるゲームといえば任天堂のようなイメージをお持ちの方が多いかと思います。同じようにスマホゲームアプリでもCygames、YostarやmiHoYoなどは、ゲームファンからすると個別のタイトル名よりも会社名が先に思いつくくらい認知されています。筆者個人の意見ですが、これらの企業は、いずれもメガタイトルを抱えた後、あわせて会社自体のイメージを確立してきたことで、企業のブランディングに成功した事例かと思います。

タイトルのファンが会社自体のファンになることで、会社から何か発信があるたびにSNSで反応されたり、オーガニックでのトレンドインや話題化が継続しやすくなります。

また、新規タイトルを出す際にも会社自体を応援してくれるユーザーが一定数存在することで、そのタイトルにファンがつき、そこからまた会社のファンが増えていく…というように、雪だるま式にクラスターが形成される良いサイクルを作り出すことも可能です。

SNSの二次拡散より強力な、ファンから友人への推奨

SNSの繋がりや、インフルエンサーよりも身近な友人や知人など、関係がより近いところからの推奨の影響力は非常に強く、ゲームを始めるきっかけとして、YouTubeやSNS広告などの接触に近い数値が出ているタイトルもあります。

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(図4:アイレップ独自市場調査データ)

実際に自分も、友人から勧められたことがきっかけで、先日リリースされた「白夜極光」をプレイしはじめました。これまでさまざまなゲームを一緒にプレイしてきた友人であれば、自分にそのゲームが向いているかどうかや、好きな要素の傾向を理解してくれている分、オススメの信頼度は段違いです。

友人がオススメしてくれたときは、実際にプレイしている画面を見せてもらったり、疑問や攻略のコツをその場で聞いたりと、個人的にはYouTubeでインフルエンサーのプレイ動画を見るよりもゲームを良く知ることができ、プレイし始めるきっかけに繋がりました。信頼関係が構築されている仲間内では、今後新しいタイトルがでるときも、「前お勧めしたあのゲームを作った会社が、また新たしいタイトルを出したぞ」と、きっと再び話題になることでしょう。

4 まとめ

今回は、ファンアートとは何か、またファンアートとブランドの関係性について語らせていただきました。

ファンアートは、ゲームのダウンロード数やPVの視聴回数、ツイートのエンゲージメント数などの数値では測定できない、熱量を可視化するひとつの指標と言えるのではないでしょうか。今後、ゲームアプリ業界はさらにレッドオーシャン化することが見込まれ、独自のポジションの確立や差別化は重要な要素になります。

自分自身もマーケティング業界からこうした取り組みを推進できるようにサポートしていければと思います。

以上、「EMOFUL」第3回となります。最後までお読みいただきありがとうございました。
次回以降もご愛読いただけましたら幸いです。

 

アイレップには、”エモーショナルエンジン”と称したゲームアプリを中心としたエンタメに愛ある集団がいます。そんなメンバーひとりひとりが持つ愛を伝えるべく、デジフルで連載を始めます。連載名は、エモーショナルエンジンのデジフル=「EMOFUL(エモフル)」です。ただ愛を語るのではなく、 アイレップらしくロジカルな視点からも切り込んでいけるような、 そんな内容を掲載していきたいと思っています。

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