アイレップが考えるテレビCMの新指標

2022.11.07

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最後まで駆け抜けることができるのか?と思われたこの連載も後半に差し掛かりました。今回は、テレビCMとデジタル広告の統合指標の考え方について、その一端をお話しできればと考えています。

改めて「視聴率」とは

本連載をご覧の皆様は、「視聴率」という概念についてご理解されている方がほとんどだと思いますが、今一度目線合わせのために説明をさせてください。

長年「視聴率」を計測し、日本のテレビ業界のスタンダードになっているビデオリサーチ社のウェブサイトを参照すると、「視聴率」について以下のように書かれています。

テレビ番組やその放送時間帯がどのくらい見られているのかを示すデータです。全国32地区で調査しています。
テレビの番組やCMがどのくらいの世帯や人に見られたかを示すデータで、テレビの媒体力や広告効果を測るひとつの指標として利用されています。
視聴率データは「国民の関心の高さを知る」「社会の動きを知る」という社会調査的な側面での利用、また、広告出稿主、テレビ局、広告会社が広告取引をする際にも利用されています。

参考:https://www.videor.co.jp/service/media-data/tvrating.html

視聴率の定義を確認したところで、少し深掘りをしてみたいと思います。長らく、視聴率というのは、「世帯」をベースに算出されておりました。関東であれば約2000万世帯あるうちの何パーセントの世帯がその番組を見ていたか、という考え方です。皆様が普段目にしている「視聴率10%」というのは「世帯視聴率」であることが殆どです。

ですが、現在は「個人」をベースに算出した「視聴率」に移行しつつあります。関東であれば約4000万人のうち何パーセントの人がその番組を見ていたか、という考え方です。そして、一部の地域においてはこの「個人視聴率」をベースにして、テレビCMの取引がなされています。

そして「視聴率」は、サンプリング調査に基づいて計測した値が算出されます。ビデオリサーチ社のウェブサイトによれば、関東では2700世帯にPM(ピープルメーター)を設置し、その世帯の誰がどの番組を見ていたかのログを収集して、視聴率を算出していると記載があります。

そして、テレビCMの世界では「GRP」という概念で広告主と放送局の間で取引がなされています。「GRP」というのはGross Rating Pointの略でCM1本ずつの視聴率を本数分足し上げた指標です。最終的には「パーコスト」と呼ばれる視聴率1%あたりの費用に出稿したいGRPを掛け合わせて費用を算出し、発注行為をおこなうという流れになります。先ほど述べた「世帯視聴率」の足し上げを「GRP」とし、「個人視聴率」の足し上げのことを「PRP」という使い分けがなされているようです。

参考:https://www.videor.co.jp/service/media-data/tvrating.html

視聴率の問題点

実のところ「視聴率」は、テレビの放映エリアごとに算出されます。関東地区は2700世帯、関西地区は1200世帯でのサンプリング調査になります。世帯数も違えば、当然のようにその中の人数についても違うので「視聴率」における分母も違うものになります。よって、放映エリア間で合算したり比較したりすることができないのです。

イメージつきますでしょうか?例えば、関東地区・関西地区・中京地区でそれぞれ1000GRPの出稿をしたとしましょう。関東地区と関西地区を足しても、関西地区と中京地区を足しても合計は同じ2000GRPにはなります。

ですが、同じ2000GRPでも実際にCMを見た世帯数も人数も違いますし、出稿金額もそれぞれ異なるので、合算や比較がナンセンスなのです。

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(図1:GRPは合算してはいけない)

テレビCMの指標をインプレッションにする

そこで我々は、テレビCMの指標をインプレッションに変換することをご提案しております。この考え方は、横山隆治氏が以前から提唱している考え方ですが、さまざまな理由から業界になかなか浸透していませんでした。ですが、我々含めクライアント企業もデジタル広告に従事している方がほとんどですので、「GRP」という概念よりも、インプレッションに換算した方が、理解が進むことがわかりました。

※横山隆治氏・・・横山隆治事務所(シックス・サイト)代表、業界人間ベム執筆者

基本的な考え方としては、1つのテレビの前に3人座っていて、そこに1回CMが放映されたら、3インプレッションという考え方です。1人に対して1回CMが表示され=1インプレッションとなります。

では、どのようにして視聴率をインプレッションにするのでしょうか?インプレッションに変換するには、先ほど説明したうちの「個人視聴率」を使用します。CM1本ごとに対し、「個人視聴率×視聴可能人口」を掛け合わせると、その1本が何人に見られたかが算出されます。それをCMの本数分足し合わせるだけです。最終的には「PRP」×「エリアの視聴可能人口」でインプレッション数が算出されます。

例えば、関東地区で、あるCMのPRPが500%だった場合、関東だと4000万人が視聴可能人数なので、4000万×500%=2億インプレッションとなります。仮に、関東地区の個人視聴率1%あたりのコストがおおよそ14万円だとすると、14万円×500で約7000万円の出稿費用となります。

インプレッションとコストを算出できたということは、CPMが計算できるようになります。上記の場合、CPM350円となり、テレビCMにおけるCPMの安さをご理解いただけたかと思います。

そして、インプレッションにすると各エリアを合算したり、比較したりすることもできます。そして、デジタル広告との比較もできるようになりますね。

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(図2:インプレッションにすれば合算も比較もできる)

そして、前回までに説明した「時系列統計モデル」によって算出したサイト流入数をデジタル広告における「クリック」相当と捉えれば、CTRやCPCも算出できるようになります。

CTRやCPCが算出できると、どんなメリットがあるでしょうか?例えば、関東地区と中京地区ではGRPはほぼ同じであるのに対し、CPCでは大きな差があります。今までではGRPが一緒、で終わりだった分析が、中京地区におけるCPC高騰の要因分析をすることによって、次のプランニングを深堀りすることが可能になります。これも「行動・成果ベース」で効果を可視化することの1つのやり方だと考えています。

運用型デジマス広告での活用

また、昨今においてはテレビの視聴時間が少なくなっている代わりにTVerの視聴時間が増えている傾向にあります。今まではテレビは視聴率、TVerはインプレッションと違う指標だったものも、テレビCMの指標をインプレッションにすることで合算できるようになりました。

これを活用すると、テレビCM+TVer広告の指標もCPM・CTR・CPCでレポートすることも可能になります。

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(図3:テレビCMとコネクテッドTV広告の事例)

図3は、関東地区でテレビCMとTVer広告を実施、他の地区でテレビCMだけを実施した事例となります。関東地区においてはテレビCMとTVerで合計2億インプレッションのCMが放映され、中京・福岡・北海道・広島地区においてはエリア間を合算して1.7億インプレッションのCMが放映されました。テレビCMをインプレッションに変換することで、それぞれのCPM、CTR、CPCを算出し、比較することができました。

この比較においては、関東地区の方がCTRやCPCの効率がよいという結果になったため、テレビCMに併せてTVer広告も実施すると、よりサイト流入に作用する、という仮説を立てることができました。

その後も切り口を変えながら実証実験を続け、現在ではテレビCMのキャンペーン実施時にTVer広告を並行でおこなう、という意思決定がなされております。

最後に

テレビCMをインプレッションに変換すること、そしてそのメリットについてご理解いただけましたでしょうか。
特典というほどではないですが、これまでテレビCMを出稿されている企業に限り、ご希望のキャンペーンにおけるインプレッションレポートを作成して、お渡しします。テレビCMのインプレッションレポートを体感してもらいたいと思っていますので、ぜひ、フォームからご連絡ください。

 

※あくまで現時点での計画ですので、変更の可能性もあることはご了承ください。

 

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この記事の著者

冨田 真吾

2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、アクセス解析の事業推進を経て、運用型広告の責任者として業務に携わる。2017年からの3年間、コンサルティング会社でテレデジ広告ソリューションを推進しさまざまな広告主企業へ導入。2020年11月にアイレップにジョイン。

2007年にDACに入社。媒体社向けのソリューション営業、ア...

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