通販サイト運営者のためのSEO講座「購買関連キーワードの捉え方」

2020.08.31

Share

通販サイトは、トップページ・カテゴリページ・製品一覧ページ・製品詳細ページの4つのテンプレートを基本として構成されることが多いです。この連載では、SEO担当者が注力すべきページテンプレートやキーワードごとに施策のポイントを解説していきます。

これまでの記事では、主にページテンプレートごとに施策のポイントをお伝えしてきましたが、本記事では施策ではなくキーワードの捉え方について扱います。キーワードの捉え方に正解はないため具体的な施策をここで紹介することはできませんが、本記事がキーワードについて改めて考えるきっかけとなれば幸いです。また、この内容はキーワードの検索意図について、あまり検討したことが無い方向けの内容となっている点についてご了承ください。

通販サイトで対象となるキーワードと検索意図の分類

通販サイトで対象となる主なキーワードは、取り扱っている製品に関する以下のような情報を軸に、「人気」「口コミ」「ランキング」などを組み合わせたものとなることが一般的です。

・カテゴリ(例:家電、家具、ファッション、など)
・製品一般名詞(例:冷蔵庫、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど)
・製品指名、型番(例:$製品指名$、xx-xxxxx、など)

これらのキーワードを分析や施策立案に活用するために、検索意図ごとに分類することも多いと思います。例えば、キーワードの意味で整理すると、以下のような分類になります。

・カテゴリ(例:家電、家具、ファッション、など)
 →興味のあるカテゴリは決まっている、このカテゴリに該当する製品の何かを買いたい
・製品一般名詞(例:冷蔵庫、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなど)
 →購入したい製品は決まっているが、具体的にどの製品にするか決めかねている
・製品指名、型番(例:$製品指名$、xx-xxxxx、など)
 →特定製品について認知したうえで検索している、この製品の購入意向が高い

この検索意図の分類は間違いではありません。しかし、通販サイトで対象となるキーワードの検索意図を、十分に洗い出せているとは言えない状態だと考えます。例えば、型番で検索している人の中には、その製品を既に持っていて説明書を探している人が含まれる可能性があります。また、製品一般名詞で検索している人の中には、購入意図はなく、その製品がどんなものなのかを知りたい人が含まれる可能性もあります。

キーワードを通販サイト側で管理しやすい分類にして扱っていると見落としがちですが、検索意図は同じキーワードであっても検索者の属性や状況などによりばらつきがあります。このことを理解したうえで、自社のWebサイトでできることがないか常に検討する姿勢が重要です。次の章で、上述した検索意図の分類に当てはまらない購買行動をご紹介します。

ケース1:「製品一般名詞A」の検索から始まり、異なる製品Bを購入する

ケース1では、以下のような購買行動について考えます。

a.「製品一般名詞A」で検索
b.「製品一般名詞A」の情報収集中に、製品Bを認知
c.製品Bについて情報収集し、製品Bを購入

もともと欲しかった製品ではない製品を購入するケースというのは少なくないと思います。一方で、この情報だけでは抽象的すぎてa~cにかけての気持ちの変化を推測するのは難しく、Webサイト側で施策立案に繋げにくいと思います。ですが、具体的な製品ごとに考えると推測しやすくなることがあります。

実際の例として、「製品一般名詞A」が「マウス フットペダル」、製品Bが目でカーソル操作する製品という購買行動があったので、こちらについて考えてみましょう。このふたつの製品には、手以外の部位でカーソル操作を可能にする、という共通点があります。最初にこの人が「マウス フットペダル」で検索したときの本質的な検索意図はどんなものだったのでしょう。

ケース1のポイント:
この購買行動をとった人は、手を痛めたためにマウスでのカーソル操作に不便を感じていました。足で操作できるフットペダルのことを知っていたため「マウス フットペダル」と検索(a)、情報収集中にWebサイトのレコメンド機能により目でカーソル操作する製品を認知(b)し、別製品へ興味が移り購入(c)したという事例になります。

この場合、「マウス フットペダル」で検索したときの本質的な検索意図は「手以外でカーソル操作できるデバイスが欲しい」であり、「フットペダルを比較検討している」ではありませんでした。わかりやすい事例ではありますが、このケースには以下3点の学びがあります。
・製品一般名詞で検索している人が必ずその製品を欲しがっているとは限らない
・製品AとBの関係を読み解くにはキーワードの意味以外の情報も考慮する必要がある
・本質的な意図に対応できる情報(このケースでは、レコメンド機能により手以外で操作できる別デバイスを表示)をWebサイト内に掲載することでコンバージョンに貢献する可能性がある

ケース2:「yy-yyyyy(型番)」を検索して、類似製品のxx-xxxxxを家電量販店で購入する

続いて、Webサイトで情報収集後に店舗で購入するという購買行動を考えます。

a.「yy-yyyyy」で検索
b.「yy-yyyyy」の情報を収集して、検索行動を終了
c.家電量販店にて、xx-xxxxxを購入

検索意図を意味だけで推測した場合、この購買行動をとった人は最初に「yy-yyyyy」で検索しているため、yy-yyyyyの購入意向が高いと考えてしまいがちです。最終的にxx-xxxxxを購入した場合、どのような検索意図だったと考えられるでしょうか。

ケース2のポイント:
この購買行動をとった人は少し前からxx-xxxxxの購入を検討していましたが、類似モデルの新製品yy-yyyyyが発売されることを知り、xx-xxxxxとの違いを知りたくて「yy-yyyyy」と検索(a)しました。しかし、xx-xxxxxとの違いに関する情報をWeb上で探すことができず検索行動を終了(b)し、違いを確認してから購入するために家電量販店へ出かけ、店員に質問したうえでxx-xxxxxを購入(c)しました。

「yy-yyyyy」で検索したときの本質的な検索意図は「類似モデルとの違いが知りたい」であり、「yy-yyyyyを購入しようとしている」ではありませんでした。このケースでは、以下2点の学びがあります。
・型番で検索している人が必ずその製品の情報だけを欲しがっているとは限らない
・類似モデルとの比較情報がWeb上にあればそのままWebサイトで購入を完了した可能性がある

SEO担当者が心がけるべきこと

製品一般名詞や型番で検索している人の多くは、キーワードの意味通りの情報を求めていると考えられますが、上記の例のように意味通りではない意図で検索する人もいます。また、検索が身近になっている現在では、ある瞬間にとっさに気になった言葉を検索する場面も増えていると思います。検索する人のすべてが本当に知りたいことをキーワードにして検索しているなら、その意味に沿った情報を用意すれば十分ですが、そうではない検索も日々行われています。これらの検索に対し、Webサイト側ではどのような情報や機能を用意するべきなのか考えることが重要です。

必ずしも、考えられうるすべての検索意図に対応すべきという訳ではありませんが、自社のWebサイトで製品購入に繋がりそうな検索意図があれば、対応できる情報や機能を用意すべきです。購買行動時の検索意図を推測するには、キーワードやデータだけを見ていても気付きにくく、取り扱っている製品の特性や業界でのポジション、購入者の意見などさまざまな要素を組み合わせて考える必要があります。自社のWebサイトでできることを個別に検討し、改善を積み重ねましょう。

まとめ

本記事では購買に関連するキーワードの捉え方をテーマとし、キーワードの意味だけを見て検索意図を分類していると、検索者のニーズに対応しきれずに機会損失につながる可能性があることをご紹介しました。キーワード以外の情報(製品特性や業界でのポジション、購入者の意見など)と組み合わせながら、検索行動の文脈や検索意図のばらつきを推測し、Webサイトに反映していくことが重要です。

資料をダウンロードする

この記事の著者

増渕 佑美

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューション部署に所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...

Share

一覧に戻る