生成AI・XRなどの先端技術や、コンテンツで生活者の心を動かす「没入するエンタメStudio」とは?

2024.03.26

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TEAM JAZZは、アイレップがデジタル広告運用で培った独自のノウハウを土台に、データとクリエイティブを駆使してデジタル時代の新たなマーケティングを実践するプロジェクトです。20239月、企業の統合マーケティング支援を強化する目的に、新たに5つの研究組織「JAZZ Studio(ジャズ スタジオ)」を設立しました。

そのひとつである「没入するエンタメStudio」は、生活者が熱量高く反応するデジタルコンテンツやXR領域などをはじめとしたエンターテインメントへの没入体験を、ビジネスの成果につなげてマーケティングに活用・実践するStudioです。中心メンバーである小野洋平と佐藤拳、TEAM JAZZを統括する木野本朋哉に、Studio設立の背景、体制、活動内容、目標などを聞きました。

エンターテインメントのデジタル活用はまだまだ発展途上

「没入するエンタメStudio」が発足した背景を教えてください。

木野本:

エンターテインメントのデジタル領域は、YouTube クリエイター、VTuber、声優など、表現が広がってきています。さらに、XRCross RealityExtended Reality)という形で、現実世界と仮想世界を融合した空間を活用するなど、生活者の楽しみ方も変わってきています。

こうした盛り上がりを見せる一方で、ビジネス的な観点での活用に関しては、まだまだ発展途上な領域です。この勢いをマーケティングに取り入れ、明確な成果として挙げられるスキームを作り出すことができれば、クライアント企業にとって新たな打ち手にもなると同時に、私たちにとって大きなビジネスチャンスになると考えています。「没入するエンタメStudio」は、その実現を目標に発足したStudioです。

「没入するエンタメStudio」は、何を研究するStudioですか?

小野:

現在は大きく2つの領域を対象にしたスキームを研究しています。ひとつは、生活者向けに、デジタルコンテンツの没入体験を提供するためのスキーム。もうひとつは、企業向けに、その体験効果をマーケティングに活用・実践し、ビジネスの成果につなげるためのスキームです。

私はXRを中心に、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、生成AIといった先進技術領域を担当し、その実現可能性の研究をしています。佐藤は、デジタルのIP(知的財産)コンテンツとゲーム領域を中心に担当しています。

ゲーム業界を中心に、XRVRのスキルを持つメンバーが多数在籍し、研究に従事

おふたりのこれまでの経歴を教えてください。

小野:

O2Oメディアのスタートアップを経てアイレップに入社し、長らく獲得領域の広告プランニングを担当してきました。その後、クリエイティブ部門に異動し、現在クリエイティブのディレクションを担当しています。

佐藤:

前職はソーシャルゲーム会社で、コンテンツプランナーとして新規タイトルの企画立案から開発・運用を担当していました。現在は、プランナーとしてアプリゲーム系のクライアント企業を数多く担当しています。また、海外で開発したゲームを日本でリリースする際に、どういった戦略を立てていけばいいか、そういったコンサルティング的な仕事にも携わっています。

Studioにはどのようなメンバーが所属していますか?

佐藤:

私のチームにはゲーム業界出身のメンバーが多数在籍しており、ゲーム業界の案件に強い人材構成になっています。過去にコンシューマー向けのゲームタイトルのプロデューサーを担当していたメンバーもいて、広告会社としては突出して人材の層が厚いと自負しています。

また、新卒入社のメンバーも、ゲーム領域で活躍しています。ゲーム内のキャラクターに当てる声優の選定や、セリフの監修、収録の立ち会いなど、開発の一部にまで関わりながら施策に取り組んでいます。

小野:

私のチームも、以前の職場でXRVRに携わっていたメンバーが数多く所属しています。中には、XRAIに強みを持つデジタルテクノロジー企業にXRコンテンツを提供した実績を持つメンバーもいます。一人ひとりが多様な経験を持つプロフェッショナル集団となっていますが、今後もより多角的な支援をおこなえるように、仲間を増やしていきたいと思っています。

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小野洋平

エンタメコンテンツやXRコンテンツに関して多数の実績

これまで「没入するエンタメStudio」として進めてきた取り組みとしては、どのようなものがありますか?

佐藤:

エンタメ領域では、「商品の認知を拡げたい」「話題化を狙いたい」というクライアント企業の課題に対して、VTuberや声優を起用したマーケティングを数多く企画・推進しています。これまでは、一部のターゲットを中心に盛り上がってきた領域でしたが、近年はエンタメコンテンツをマーケティングに活用する企業も徐々に増えるなど、市場としても成長しています。クライアント企業の事業成長を目標に企画・推進する中で私たちが最も力を入れているのは、キャスティングです。VTuberや声優はファンとの距離感やコミュニケーションは人によってさまざまで、ターゲットの心をつかむ力(=エンゲージメント)が強いことも大きな特徴です。そのため、単純なファンの数で判断するのではなく、ファンとどのような会話をしているのか、ファンの熱量はどのくらいか、などを分析したうえでキャスティングや企画を考えています。

また、これはぜひ知っていただきたい取り組みなのですが、Studioメンバー全員をVTuber化するプロジェクトを実施中です。クライアント企業にVTuberコンテンツを提案するにあたり、まず自分たちがVTuberになってみようというチャレンジです。9月に開催されたJAZZ Fesでも、「全業種必見!30分でわかるVTuber活用術」というセッションにて、塁、藍、CHIKONZ4名がVTuberとして登壇しました。興味のある方はぜひアーカイブをご視聴ください。

XR領域では、VRコンテンツやAR技術をもちいた交通広告、MRを活用したマーケティング支援など、さまざまな取り組みをおこないました。なかでもVR領域では、人気ナイトクラブのVIP席やダンスフロアにいるような音楽と映像が自宅で楽しめる、VR動画コンテンツ『A NIGHT IN ANOTHER WORLD』を制作しました。最高水準のクオリティを目指し、クリエイティブディレクションをおこなったのですが、この作品がVR業界での卓越した功績を称える国際的なアワード「VR Awards」において「VR Film of the Year」部門でファイナリストに選出されました。

参考:アイレップ TEAM JAZZ、VR業界において国際的に権威のあるアワード「VR Awards」のVR Film of the Year部門でファイナリストに選出 ~『A NIGHT IN ANOTHER WORLD』~|アイレップ|2023年9月15日

このように最新技術を活用しながら情報量を増やし、より生活者に訴えかける取り組みによって、第三者からも評価が得られはじめているという手応えを感じています。

アニメ、ゲーム以外にも大きな可能性がある

どのような課題を抱えている企業に参加してほしいとお考えでしょうか?

小野:

XRは、リアルとバーチャルを融合させた体験を提供できるのが大きな持ち味です。時間、空間、距離的を一気に縮め、これまでにない没入体験を提供することができます。こうした強みを活かした活用ということで、たとえばブランドストーリーを伝える取り組みや、BtoBの展示会で商品を紹介する取り組みにおいて、より没入感の高い企画に挑戦してみたい企業のご担当者には、ぜひお声がけいただきたいと思っています。

佐藤:

今後は、ゲーム業界以外とのタイアップ事例も増やしていきたいと思っています。VTuber、声優などのコンテンツは、アニメやゲームに関連する商材だけでなく、それ以外の商材でも効果的なプロモーションができると考えています。

特に、既存の広告施策を一通り実施し尽くしてしまい、別の流入チャネルを育てたいとお考えの企業には、ぜひご検討いただきたいと思っています。実際、インフルエンサー施策に関しては、依頼先が枯渇してきている企業もいらっしゃいます。そこで新しい切り口を試してみたいときに、VTuberという選択肢は非常に大きくなっています。

既存のVTuberタイアップの事例を見ると、人ができることであれば、もはやVTuberにできないことはほぼないといえます。実際に物を食べることはできませんが、飲食系のタイアップは多いですし、スポーツチームとのコラボで選手と次元を超えたインタビューをおこなうなど、さまざまな形での起用が可能です。

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佐藤拳

アイレップらしさを打ち出した施策を実施していきたい

今後の目標を教えてください。

佐藤:

StudioのメインテーマであるエンタメコンテンツやXRの領域にも生成AIの活用を取り入れた研究・ソリューション化を進めたいと思っています。生成AIの進歩は目覚ましく、見逃せない領域になりつつあります。やはり、先進技術として押さえておくべき領域ですし、それと同時に、エンタメコンテンツとしてこれから大きく発展する余地がある領域でもあるからです。

ただし、これを広告として取り込むには法的観点、それを受け取る生活者の気持ちなど、さまざまなハードルがあることも事実です。当社には、クリエイティブ領域専門の法務担当者がおり、さまざまなリスクヘッジをおこなう体制を構築しています。繊細な問題を多く抱えている分野でもありますが、そうした問題をひとつずつクリアしながら、Studio一丸となって取り組んでいきたいと思っています。

小野:

XR領域についてはアイレップが得意とするデジタルマーケティングとXRコンテンツを掛け合わせた支援をしたいと考えています。XRコンテンツがデジタルマーケティングと地続きで連動することにより、生活者の体験はさらに拡張し没入感が増していきます。長年、デジタルマーケティングに向き合ってきた当社だからこそ実現できる取り組みだと思っています。

また、エンタメコンテンツでも生成AIをもちいた制作が増えてきています。これまで、アニメ表現をもちいたクリエイティブは、予算や制作期間の観点からデジタルマーケティングとの相性がよくありませんでした。しかし、制作過程に生成AIを活用することで、予算や制作期間のハードルが下がり、表現の選択肢がどんどん広がってきています。現在、クライアント企業と共創しながら研究を進めており、その中で実績も生まれはじめているのですが、生成AIを活用したエンタメコンテンツを制作で終わらせるのではなく、デジタルで成果を出せるマーケティング手法として発展させることが当Studioの研究意義だと思っています。

佐藤:

短尺アニメーションは、広告でもっと力を発揮する余地があると見ています。最近も、日本マクドナルドがX公式アカウントに投稿した20秒のPRアニメーション動画が、世界中で大きな話題になりました。やはりアニメーションには人の興味関心を引きつける力がありますし、SNSのおかげでクリエイターの裾野も広がっていると感じています。

その一方、人気のクリエイターに依頼することで、デジタル広告のスピード感の合わないケースもあります。生成AIの活用は、それをクリアするひとつの手段にならないかと考えています。運用広告における汎用的な部分やパターン制作などで、AIをもちいてコストを下げる取り組みができたら、クリエイターはより質の部分にリソースを割くことが可能になります。生成AIの活用が、クライアント企業、クリエイター双方に、魅力的な未来をもたらすと考えています。

もうひとつの目標として、施策に「アイレップらしさ」を出していきたいです。アイレップは獲得領域に非常に強く、成果を可視化し、改善することに定評があるので、クリエイティブ領域でも成果の可視化やPDCAを実現したいと以前から思っていました。

その一環として昨年取り組んだ事例に、「アプリ内PR施策」があります。通常であれば、タイアップ施策としてVTuberのアカウントでPR配信をおこないますが、この案件では、PR配信をVTuberのアカウントでおこなうと同時に、クライアント企業のアプリの中にもVTuberの特別コンテンツを設置して、楽しんでもらえる形にしました。それによって、クライアント企業のアプリに直接誘導することができると同時に、詳細な効果測定を可能にしました。

これまでは、VTuberPR配信の数字だけで成果を判断せざるを得ませんでしたが、アプリに遷移した数字まで測れるようになったことで、施策効果をより明確に可視化できるようになりました。

このように、認知、PRだけでなく、獲得まで考えた施策を実施し、その成果を数値で証明するという考え方自体がアイレップらしいと思いますし、だからこそ私たちがやる意義があると思っています。

 

プロフィール

株式会社アイレップ
取締役
木野本 朋哉

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2008年に博報堂に入社し、ストラテジック・プランニングから、制作・メディアのプロジェクトマネジメントまで、幅広くマーケティング・広告実務に従事。2015年には、外資系PEファンドに1年間出向し、M&A・PMI実務を経験。帰任後は博報堂DYホールディングスにて、グループ中期経営計画の立案・D.Aコンソーシアム・ホールディングスのTOBに携わる。2019年よりアイレップに参画し、2022年より取締役としてマーケティングサービス部門全体を管掌。また、自らが深く経営計画・事業開発に携わってきた経験から、クライアント企業の事業課題を捉えたマーケティング戦略・施策立案を得意とする。

 

株式会社アイレップ
小野 洋平

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アイレップに入社後、統合プランニング本部の局長を歴任し、クリエイティブ職へ。国内外のCM・Webムービー・XRコンテンツなどの制作開発の経験を重ね、テクノロジー領域に強みを持つクリエイティブディレクター、フルファネル発想のプロデューサーとして、次世代型デジタルエージェンシーの価値を追求している。

 

株式会社アイレップ
佐藤 拳

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ソーシャルゲーム会社でコンテンツプランナーとして新規タイトルの企画立案から開発・運用を経験し、2019年にアイレップに入社。前職のスキルを活かし、プランナーとしてアプリゲーム系のクライアント企業を数多く担当する。「プロダクト開発側の目線を忘れない」を心がけ、ユーザーの熱量をどう醸成するかを起点として、TwitterからOOHまで、ジャンルに囚われない企画立案をおこなう。また、新たなアプリゲームを中心としたプロジェクト「Emotional Engine」を立ち上げや、ユーザーのアクションや熱量を可視化させ、調査分析手法を確立させることにも注力。「なんとなくそう思う」部分を定量的にし、競合との比較のなかから戦略立てを導き出すフロー作成に従事する。

この記事の著者

DIGIFUL編集部

「DIGIFUL(デジフル)」は、(株)アイレップが運営する「デジタル時代におけるマーケティング」をテーマにした、企業で活躍するマーケティング担当者のためのメディアです。

当社がこれまでに得たデータや経験から、具体的事例・将来展望・業界の最新注目ニュースなどについて情報を発信しています。ニュースやコラムだけでなく、日常業務や将来のマーケティング施策を考えるときに役立つダウンロード資料や、動画で学べるウェビナーコンテンツも随時追加していきます。

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「DIGIFUL(デジフル)」は、(株)アイレップが運営する...

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