EMOFUL #1:ヴァーチャルライブによる新たな音楽体験と、そこに生まれた価値。

2021.08.10

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アイレップには、”エモーショナルエンジン”と称したゲームアプリを中心としたエンタメに愛ある集団がいます。そんなメンバーひとりひとりが持つ愛を伝えるべく、デジフルで連載を始めます。連載名は、エモーショナルエンジンのデジフル=「EMOFUL(エモフル)」です。ただ愛を語るのではなく、 アイレップらしくロジカルな視点からも切り込んでいけるような、 そんな内容を掲載していきたいと思っています。今回はその第1回となります。

最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

はじめに

コロナ禍で生まれた、新たな音楽体験

外出が困難な社会環境となり1年以上が経過しました。人となかなか会えない状態が続きます。音楽業界でもライブの開催が引き続き難しくなっています。

ライブというのは、ファンにとってアーティストと空間を共有して自分に意識を向けてくれていることを大きく実感できる場です。アーティストにとってもファンの反応を直接感じて支えられていることを感じる場であると考えています。つまり、ライブが開催できない状態が続くというのはアーティストとファンが遠距離恋愛のような疎遠状態になってしまっているということです。

そんな環境の中でもオンライン配信などを駆使して多くのアーティストが人々に音楽を届けるために試行錯誤されるなかで、RADWIMPSは新たな音楽体験を生み出し、ファンとの距離を近づける場を作り出しました。”ロールプレイング・ミュージッック“と称した、ヴァーチャルライブアプリ「SHIN SEKAI “nowhere”」です。

今回はこの「SHIN SEKAI “nowhere”」をテーマに、ヴァーチャルライブがどのような体験を生み出したのか、そしてアーティストとファンの間に何を生み出したのかについて考察します。

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「SHIN SEKAI “nowhere”」とは

「SHIN SEKAI “nowhere”」は2021年7月16日(金)〜18日(日)の3日間、1日につき11:00~ 16:00~ 22:00~の3回公演された限定ヴァーチャルライブです(計9回の公演)。通常のライブと異なる特徴としては、アプリをインストールし、スマホ内で体験できる点です。

具体的には、アプリプレイヤーが自分自身でアバターを作成し、約40分間に渡り事前収録されたRADWIMPSの楽曲が流れていくヴァーチャル空間を自由に動き回り楽しむことができるという内容です。このヴァーチャル空間には楽曲ごとの世界観が用意されており、曲が変わるごとに次の世界へ移動するような仕組みになっていました。操作方法は、RPGアプリを踏襲するような形でスマホを横にして左手でアバターを移動させつつ、右手でジャンプやジェスチャーモーションなどのアクションをおこなうことができる仕様になっています。

実はこのアプリは昨年12月に「SHIN SEKAI」としてリリースされており、試験的に2日間無料でヴァーチャルライブが開催されました。その際、アプリを通して得られる体験は「プレイヤーがヴァーチャル空間を旅する」ということにフォーカスされた内容でした。そこから半年経った7月に有料版「SHIN SEKAI “nowhere”」としてアップデートされた今回のヴァーチャルライブでは、「RADWIMPSメンバーと一緒に楽曲を踊り回る」ことにフォーカスされていたように感じます。後ほど触れますが、当アプリで登場するRADWIMPSメンバーは、映し出される単なる映像ではなく、モーションキャプチャによってメンバー本人達の細かな動きが記録された3Dモデルの”リアルなRADWIMPS”です。プレイヤーは「好きな場所で」「好きな角度で」「好きな動きで」彼らと時間を共有することができるのです。

ここからさらにヴァーチャルライブがどんな体験を生み出したのか、その魅力を深堀りしていきます。

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「SHIN SEKAI “nowhere”」4つの魅力

魅力(1) 現実ではあり得ないような距離でメンバーに会えること

前述したように、当ライブではモーションキャプチャによって撮影されたRADWIMPSのリアルな姿が登場します。そのため、ヴァーチャルの中でありながらも、これまでにライブで見てきたようなメンバーのパフォーマンスがそのまま表現されています。

時には巨大な姿となり、時には等身大の大きさになるRADWIMPSに対して、好きな距離感で触れ合うことができ、通常のライブでは不可能な至近距離で一緒にライブを楽しむことができることが最大の魅力です。

前回のライブは、ヴァーチャル空間が楽曲の世界観を表現することにフォーカスしており、3DモデルのRADWIMPSメンバーが登場するのは最後の2曲のみでした。それは遠距離恋愛中にも関わらず一瞬だけしか会うことができなかったような、嬉しくも寂しいような感覚です。 一方の当ライブでは、一曲目から3Dモデルのメンバー達が登場し、常にRADWIMPSとファンとがコミュニケーションを取れるような空間が広がっている仕様になっていました。遠距離恋愛中ではあるものの、一瞬と言わずにしばらくの時間を共に過ごすことのできたような、ようやくまたRADWIMPSと出逢えたような、そんな体験であったと言えます。

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魅力(2) 世界観を縦横無尽に動くことができること

仮想空間だからこその動きが当アプリでは体験できます。曲に合わせてヴァーチャル空間が切り替わるなかで、時には電脳世界のような大地を駆け巡り、時には生き物のように動き回るステージを散策し、時には幻想的な空間を飛び跳ね、時には都市の夜景を飛行しながら、RADWIMPSとライブを楽しむことができます。

現実の重力から解放された通常ではできない動きで、現実には存在しない風景を探索しながら、RADWIMPSの楽曲を楽しむことができるのはヴァーチャルライブならではの体験です。

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魅力(3) 適度なソーシャル性

「SHIN SEKAI “nowhere”」の空間は個人に閉じられた世界観ではなく、オンライン上に開かれた場所となっており、同時刻に参加しているユーザー達が共に動き回ることができます。友人を誘って一緒に旅をしたり、会ったことのないRADWIMPSのファン(通称:wimper)同士でヴァーチャル上のコミュニケーションを取ることもできます。

積極的に会話をする必要があるわけではなく、ジェスチャーモーションを使って他のプレイヤーと一緒に音楽に合わせて手拍子をしたり頭を振ったりするような、言葉のいらないコミュニケーションができます。実際のライブで大勢の人達がひとつの空間を共有しながら楽しむように、ヴァーチャル空間でもプレイヤーが思い思いに楽しみながら同じ空間を共有することができることも当アプリの魅力のひとつです。

またそれらの風景をプレイヤーがスマホでスクショすることができるため、SNSにて多くのUGC※1が見られました(当記事の筆者自身もストーリーズに投稿したプレイヤーの一人です 笑)。

※1:UGCとは、「User Generated Contents(ユーザー生成コンテンツ)」の略称。ソーシャルメディア上で企業ではなく一般生活者が作成したコンテンツを指す。

コロナ禍で失われてしまったwimper同士でRADWIMPSを応援するという行為が、ヴァーチャルライブの場を利用して新たに形成されました。

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魅力(4) 手軽にどこからでも没入できること

外出しづらい社会情勢に合わせて誕生した当アプリは、スマホさえあればどこからでも参加することができます。手軽に体験できるにも関わらず、グラフィックのクオリティが高いために参加するとあっという間に没入できてしまうことも魅力です。

これまでは会場がなければ開催することのできなかったライブですが、仮想空間に領域を拡張することによって表現の幅が増えました。今後コロナ情勢が回復してからも、どこでも体験できるという利点を生かした活用シーンは増えていくのではないでしょうか。また、ライブ会場が遠い為になかなかライブに参加できなかったファンでも参加することができるというのも大きな利点だと思います。

7月22日(木)にRADWIMPSの配信ライブにて、メンバー自身も「ヴァーチャルライブという在り方がもっと当たり前になっていくかもしれない」という発言をされており、アーティスト自身も新しい音楽体験の可能性を感じているのが分かりました。多くのアーティストがヴァーチャルライブを導入し、場所を選ばずに誰でも体験できることが当たり前になる未来も近いのかもしれません。

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ヴァーチャルライブによってアーティストとファンの間に生まれたもの

新型コロナウイルスの影響で、RADWIMPSが2020年に開催予定だったツアーが延期になってしまいました。冒頭に記述したように、コロナ禍でライブが開催できずアーティストとファンとの間に大きな距離が生まれてしまったのです。そんな距離を少しでも埋めるべく、RADWIMPSは人々を励ますための「Light The Light」という楽曲を作り、無料で配信しました。そのあとも人々を励ますために「新世界」「ココロノナカ」などの楽曲を次々にリリースしました。苦しい生活が続く中でもRADWIMPSはそうして音楽で人々を応援してくれていたのです。

しかし、「SHIN SEKAI “nowhere”」による新たな音楽体験の提供により、楽曲をファンが受け取るという一方通行的なものから、メンバーやファンのみんなと同じ時を過ごす特別な場を創り上げることに成功したのだと思います。化された空間なので開催期間に制限は無いのですが、あえて開催期間を限定することで“直接会えた”という感覚が強まり、アーティストとファンの間の距離を縮める特別な時間になったのではないでしょうか。

※こちらのライブは、アンコールライブという形で7月30日(金)、31日(土)に同じ内容でライブが開催されました。8月1日 からはアーカイブがリリースされています。 


まとめ

今回は「SHIN SEKAI “nowhere”」を通してヴァーチャルライブの魅力と、それによって生み出されたものをお伝えしました。

過去には、2020年に米津玄師がフォートナイトにてヴァーチャルライブをおこない、プレイヤーが思い思いにソーシャル上で楽しむという事例もありました。これまでリアルでしか味わうことのできなかった音楽ライブが、アプリゲームやオンラインゲームなどの環境を活用することでヴァーチャルライブという新たな場にフィールドを広げつつあります。RADWIMPSや米津玄師の例から始まり、今後さまざまなアーティストでも同様の広げ方が見られるのかもしれません。しかしリアルライブもヴァーチャルライブも根底にあるのは「アーティストとファンとの繋がり」であり、それはこれからも変わらないと考えます。

リアルのライブが日常に戻ってきたとき、次はリアルとヴァーチャルが織り混ざった「更なる新たな体験」が生まれることへの期待と共に、筆者自身もマーケティング業界に身を置くいち担当者としてそうした新たな体験にお力添えしたいと感じます。

以上、「EMOFUL」第1回となります。最後までお読みいただきありがとうございました。次回以降もご愛読いただけましたら幸いです。それではまた次回。

この記事の著者

エモーショナルエンジン

「Emotional Engine(エモーショナルエンジン)」とは、 ゲーム案件を中心にユーザー視点に基づいて「熱狂を科学する」プロジェクトチームです。 

ゲーム市場をはじめとしたレッドオーシャン化が進んでいる業界において、アイレップが得意としてきたロワーファネル(獲得領域)だけでは不十分な時代が訪れています。 ファンの愛着を醸成するミドルファネルからアッパーファネルの攻略と、そのファンの熱量を可視化することが重要になっていると考えます。 

そこで私たちは、施策を通じてファンの醸成をしていくミドルファネル攻略を主軸とした体制を整えました。 長年データマーケティングで培ってきた知見を活かして、プロダクトの特性やファンの属性を定量的に導き出して効果検証を行い、最適なクリエイティブをご提供します。

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