「コンテンツSEO」が意味することとポテンシャルを活かすコンテンツ追加の考え方

2023.07.19

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ここ数年で、「コンテンツSEO」に取り組みたい、とお問い合わせをいただくことが増えてきました。当社は「コンテンツSEO」という名称のサービス提供はないのですが、SEO業界の用語として一般的になってきているような印象を受けます。本記事では、用語として広がりを見せる「コンテンツSEO」が持つ意味や、取り組む前に検討すべきことなどを考察します。

「コンテンツSEO」が意味することと検討すべきこと

「コンテンツSEO」が意味すること

「コンテンツSEO」でお問い合わせいただくクライアント企業が想定されているのは、一定の検索数のあるキーワードに対応するコンテンツを自社サイトに追加する取り組み、具体的には読み物記事を複数公開する取り組みを意味していることが多いようです。

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(図1:想定されている「コンテンツSEO」施策イメージ)

 

このお問い合わせに至る背景

企業のWebサイトは、通常ビジネスの成果(売り上げ、問い合わせ数増加など)に繋がるようコンバージョン数や流入数などのKPI達成に向けて運用されており、自然検索経由流入のKPIを追っているWeb担当者は多いと思います。この場合は、SEOに取り組むことで自然検索経由流入の増加や検索順位の上昇を狙っていくことになります。

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(図2:BtoBサイトを例とした場合のKGI、KPIとソリューションの関係)

自然検索経由流入の増加(SEOの成果)をもう少し具体的にすると、大きくふたつに分類できます。「既存ページの順位上昇」「流入キーワードバリエーションの増加」です。流入を狙いたいキーワードがすでにある程度の順位で表示されている場合はさらに順位を上昇させるための施策を検討するのに対し、流入を狙いたいキーワードに対応する情報をWebサイトが保有できていない場合は、その情報を追加することで流入キーワードのバリエーションを増やす施策を検討します。この後者の取り組みは、既存ページへの情報追加で対応することもあれば新規ページを追加して対応する方法も考えられるのですが、「コンテンツSEO」でお問い合わせいただく方の中には、流入キーワードバリエーション増加のための手段を新規ページ追加に限定して認識されている方も多いようです。

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(図3:SEO施策で期待する状態と施策対象箇所)

「コンテンツSEO」の前に検討すべきこと

前述のように「流入キーワードバリエーションの増加」の手段を新規ページ追加のみ、と限定してしまうと検索流入増加は見込めるかもしれませんが、せっかく作るコンテンツのポテンシャルを最大限発揮できない可能性があります。流入キーワードバリエーション増加を目的に情報を追加していく取り組みは推奨されますが、その手段はビジネス成果への寄与度も考慮して決定することが重要です。情報をWebサイトに追加する際は、新規ページ追加という手段に限定せず、既存LPへの情報追加・テンプレート改善なども選択肢に入れたフラットな視点で検討するほうが、追加情報の活用幅が広がります。

当社では、SEOサービスとして検索順位上昇を通じた検索流入増加を支援していますが、その先のビジネスの成果に寄与させることをゴールとしています。「コンテンツSEO」として新規ページ追加を取り組みのゴールにしてしまうと、本質的なWebサイトの成長にはつながらないリスクがある点は考慮しておくべきと考えます。最終的に、検索流入獲得を意図したコンテンツの新規ページ追加という手段に落ち着くことも多々ありますが、この手段を選択する前段階で追加情報の5W1Hを検討するプロセスを踏むことを推奨しています。

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(図4:情報追加時の検討プロセスの違いでアウトプット手段に差が出るイメージ)

これにより、同じ情報をより自社に役立つ形で活用することにつながるほか、企画段階で情報追加時のコンテンツの解像度をあげられるため、最終的な品質コントロールもしやすくなります。

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(図5:5W1Hの考え方を用いて情報の追加方法を検討する)

コンテンツの活用検討プロセスが与えるメリット

検索市場に対応する読み物記事を複数公開する、という意味での「コンテンツSEO」では得にくいメリットについて紹介します

(1)コンテンツの中身を最大限活用できる

コンテンツを制作する際は、その中身にあたる文章やデータ、図表、画像、動画、などが用意されます(この記事ページで言えば、本文や図が該当します)。これは、コンテンツ制作のために作られることもあれば、普段の業務の中ですでに作られている場合もあります。「コンテンツSEO」に閉じた形でコンテンツ制作を進めるとコンテンツの中身は新規ページの中でのみ表現されることになりますが、作成する情報の5W1Hを検討することで活用方法の幅を広げることができます。

・Webサイト内の複数箇所でコンテンツ活用する例
同じデータを保有しながらも活用範囲が異なるWebサイトの例をご紹介します。同業種のA社とB社は同じテーマに関する情報を保有していますが、サイト内の活用方法が異なります。

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(図6:同じ情報を保有しつつWebサイト内での活用方法に違いがある例)

A社は検索経由の流入を期待するページに読み物形式で保有情報を掲載、B社はそれに加えて既存ページにも異なる見せ方で情報を掲載しています。A社の想定メリットはコンテンツページへの検索経由流入のみですが、B社はそれに加えて情報追加による本体ページの検索エンジンからの評価上昇、ユーザーに有益な情報を本体ページに追加することによるコンバージョン率上昇なども見込める可能性があります。

(2)ビジネス成果に寄与するコンテンツ・施策に注力できる

自然検索流入獲得のみが目的となってしまうと、つい検索数の大きいテーマでのコンテンツ制作に注力したくなり、いつの間にかビジネスゴールとは関連性の低いテーマのコンテンツを作っていた、というケースもあります。コンテンツをたくさん保有して検索流入が増えることでサイト自体を知ってもらう、将来の見込み顧客との接点を得る、など一定のメリットもあるため一概に悪手とは言いきれませんが、そのコストをよりビジネス成果につながりやすい施策に使った方がいい場面も多いと思います。

情報追加の前段階で5W1Hを整理しておくと、その情報を扱う目的(Why)やターゲット(Who)もおのずと検討することになりビジネスゴールと関連性の低いテーマは除外されるため、こういった状態の回避にもつながります。

(3)非コンテンツページの改善にもつながる

情報を追加する際に、どこで(Where)やどのように(How)も検討するため既存ページへの追加やビジュアライズした見せ方も施策候補に含まれることになります。例えば、ホテル予約サイトの一覧ページにホテルの価格相場や平均気温などの情報を追加する、などのイメージです。こういった取り組みはユーザーにとって便利な追加であればユーザビリティの向上も期待でき、ユーザビリティが高まれば便利なWebサイトと認知され、リピーターの増加も見込めます。

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(図7:海外大手サイトが一覧ページにコンテンツを追加している例(2023/6/29時点))

画像引用:https://www.tripadvisor.com/Hotels-g60763-New_York_City_New_York-Hotels.html
画像引用:https://www.expedia.com/New-York-Hotels.d178293.Travel-Guide-Hotels

非指名キーワードの流入獲得を目的とした新規ページ追加施策は、その記事群(メディア)のファンを獲得できたとしても、そのサイト本来のサービス(通販や求人・不動産の検索など)のファン獲得にはつながりにくいことが多いと思います。Webサイトのファンが少なく、流入の大半を非指名キーワードに依存しているような場合は、Googleのアップデートで流入が減少するリスクがあることも知っておくとよいでしょう。

検索流入を集めるコンテンツ制作のポイント

Webサイトに情報を追加するときはそのポテンシャルを最大限発揮するために5W1Hの検討プロセスを踏むことを推奨しました。もちろん、このプロセスを踏んだうえで、検索流入を得られるコンテンツ制作の手段を取ることもあると思います。本章では、検索流入を集めるコンテンツ制作のポイントをご紹介します。

トピックの選定

自社サイトに関連しているものの保有していないトピックの中から選びます。選択の基準には、ビジネス成果への寄与度に加えて検索意図と検索数を考慮するとよいでしょう。検索意図は、ユーザーが何を知りたくて(What)、なぜ知りたいのか(Why)という観点の他に、検索エンジンがどう捉えているかも確認します。

Googleが公開している検索品質評価ガイドラインでは、「クエリ(検索キーワード)は、Know query、Do query、Website query、Visit-in-person queryのひとつ以上の意図を持つ」と紹介されています。コンテンツが満たせる検索意図は、一般的に情報収集を目的としたKnowクエリに該当します。流入を獲得したいキーワードの検索結果で情報提供目的のコンテンツが上位に表示されているかどうかで、検索エンジンが認識している検索意図を類推することができるため、こちらも確認するようにしましょう。

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(図8:検索意図の4分類(General Guidelines p.87より抜粋、2023/6/29時点))

参考: searchqualityevaluatorguidelines.pdf

また、自社サイトがそのトピックを扱うのにふさわしいか、という観点も重要です。Webサイトが検索意図に応えられる専門性あるいは経験を持っていて、その分野で権威性があること、外部からの信頼を得られていること、についても選定の基準に含めるようにしてください。Googleは検索者に有益な検索結果を生成するために、これらの指標をE-E-A-Tと呼称して重要視しており、特にYMYLに該当する(人々の健康、経済的安定、安全、または社会福祉や幸福に重大な影響を与える可能性がある)トピックではこれを満たしていないと検索結果での上位表示は難しくなっています。

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(図9:E-E-A-Tのイメージ(General Guidelines p.26を基に作成、2023/6/29時点))

参考: searchqualityevaluatorguidelines.pdf

検索品質評価ガイドラインとは、Googleが外部に委託している検索品質評価者が、検索結果の品質を評価するための指針をまとめたものです。詳細は以下の記事で解説しています。

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▼関連資料

 

ターゲット、コンテンツのゴールを定義する

コンテンツに訪問してほしいターゲットを定義します。性年代や属性を整理しましょう。例えば、BtoBサイトの場合はターゲットとする訪問者の職種や役職なども加味するようにします。これにより表現方法や求められる情報も決まってきます。

あわせて、流入を見込むキーワードの検索者が検索行動を完了するために必要なこと、も洗い出します。例えば、「面接 持ち物」と検索する人は面接に持っていく持ち物が用意できれば検索行動は完了しますし、「確定申告 やり方」と検索する人は確定申告の手続きができれば検索行動が完了します。

コンテンツを見てほしいターゲットが検索行動を完了できる状態を明確化し、それに応えられる内容にします。この際、トピックによっては1ページで検索行動を完了してもらうのが難しい場合もあります。こうしたケースでは無理に1ページにまとめず、必要な情報を複数ページにわたって用意し、内部リンクで誘導することを推奨します。

トピックテーマに対して求められる内容を洗い出す

流入を見込むメインとなるキーワードの関連キーワードなど参考に、扱うべき情報に抜け漏れがないか確認しておきます。直近では、検索結果のPAA(People Also Ask、日本語では「他の人はこちらも質問」)枠の表示も増えており、検索者のそのトピックに関連する質問を見ることもできるため、これも参考にすることができます(関連の低い質問が表示されることもあるため、あくまで参考情報として使うことを推奨します)。

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(図10:PAA枠の例(2023/6/29時点))

独自のデータ、見解をつける

Googleは人のために作られた独自のコンテンツを評価します。また、人々にとっても既存のコンテンツを要約したようなコンテンツには価値はないでしょう。必ず独自のデータや見解を含む、ターゲットにとって価値あるコンテンツになっていることを確認してください。

また、Googleはコンテンツ制作者向けに内容と品質に関する自己評価項目を公開しています。こちらもあわせて確認しましょう。

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(図11:内容と品質に関する自己評価項目)

参考: 有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 | Google 検索セントラル  |  ドキュメント  |  Google for Developers

ターゲットがストレスなく閲覧、理解できるようにする

コンテンツの中身がある程度完成したら、改めて表現方法に磨きこみの余地がないか確認します。例えば以下のような項目の確認が推奨されます。

・言い回しは簡潔で単純な表現になっているか
・図解可能な内容をテキストだけで説明していないか
・重要箇所を強調し、あまり重要でない箇所は抑えた表現にしているか

また、予備知識が必要な情報に触れる場合は、簡易的に補足情報を入れつつサイト内の別ページで解説していればそのページへ内部リンクを設置するのもおすすめです。ターゲットとする訪問者が「ストレスなく閲覧・理解できる状態」を目指しましょう。

定期的に情報を更新、メンテナンスする

コンテンツは公開したら終了ではありません。常に正しい情報を掲載できるよう定期的にメンテナンスすることを推奨します。Google も新鮮な情報を検索上位に表示できるよう、フレッシュネスシステムという指標をランキングアルゴリズムに組み込んでいます。情報を追加する際は、新鮮で正しい情報の公開を継続するための体制構築もセットで実施しましょう。

参考:Google 検索ランキング システムのご紹介 | Google 検索セントラル  |  ドキュメント  |  Google for Developers

まとめ

本記事では、「コンテンツSEO」が意味するものとWebサイトへの情報追加時の推奨プロセス、検索流入を獲得するためのコンテンツ制作のポイントをご紹介しました。コンテンツの発信はWebサイトの成長に欠かせないものですが、検索流入獲得とビジネスへの成果寄与度を両立させることが重要と考えます。コンテンツマーケティングやSEOにお悩みの方はぜひアイレップにご相談ください。

この記事の著者

増渕 佑美

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューション部署に所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...

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