Instagramを活用したライブコマースの最適解

2022.03.29

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2022年3月22日に出版される『成果を上げるライブコマースの教科書』の書籍を記念して、著者である武者慶佑と、ライブコマースで成果を出し続けるD2Cブランド「YOAN(ユアン)」のPR担当日原様、Facebook JapanD2C、ディスラプター&トラベル事業部 佐藤太泰様による鼎談をお届けします。それぞれ異なる専門領域のプロとしてライブコマースに携わる立場から、ライブコマースで成果を出すためのコツ、ライブコマースの成果を上げるInstagram運用のポイントなどを語っていただきました。

▼鼎談参加者

「YOAN」PR担当(株式会社キュー)
日原実優氏

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1996年生まれ、山梨県出身。2021年1月よりKYUに入社。化粧品検定1級、コスメコンシェルジュの資格を保持。コスメ販売員経験を活かしYOANのインスタライブに定期的に出演している。現在はコスメ薬事法の資格に奮闘中。

 

Facebook JapanD2C、ディスラプター&トラベル事業部 インダストリーマネージャー
佐藤太泰氏

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大学卒業後、楽天株式会社でインターネット広告の営業、印刷会社で経営全般に携わる。その後、米国アリゾナ州サンダーバード国際経営大学院に留学しMBA取得。帰国後はP&Gにてヘアケアブランドのマーケティング及びカテゴリー横断のDigital/E-Commerceを担当。2016年6月Facebookに入社し美容・化粧品業界の営業担当を経て、2020年4月より現職。D2C、ディスラプター&トラベル業種領域を統括。

『ライブコマースの教科書』を刊行した目的と背景

――『ライブコマースの教科書』刊行の目的と背景をお聞かせください。

武者:
日本ではまだライブコマースの認知度自体、さほど高くありませんが、コロナ禍によるEC市場の拡大とともに、企業からの注目度は大きく上がっています。ただ現在「ライブコマース」と検索すると、出てくるのは中国のKOL(Key Opinion Leader)事例ばかりです。モノづくりや接客を重視した日本独特のライブコマースの方法論や事例はまだ広く知られていないと感じています。

日本ではライブコマースをECの一手段と理解している方が多いですが、マーケティングの延長線上にあると考えるべきです。それがライブコマースの本質を正しく理解することにもつながります。

『ライブコマースの教科書』では、ライブコマースを実施する際の心がけや注意すべきことを網羅し、かつライブコマースを実施するのに現在もっとも使いやすいプラットフォームであるInstagramの活用方法も紹介しています。企業の担当者はもちろん、D2Cブランドや地方の小さなショップの方など、ライブコマースに興味のあるすべての方に参考になる内容です。

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【書籍概要】
タイトル: 「成果を上げるライブコマースの教科書」
著者:株式会社アイレップ 武者慶佑、池田好伸、川田麻由佳
出版社:翔泳社
発売日:2022年3月22日

【書籍目次】
特別対談 ライブコマースの未来 株式会社321(ゆうこす)
EC業界を変えるライブコマース市場
目的別に考えるライブコマースの企画
売上を伸ばす番組構成と演出方法
成果を最大化するソーシャルメディア集客法
ライブコマースを習慣化する仕組み
特別付録 Facebook Japan 佐藤太泰氏インタビュー

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鼎談はZOOMにて実施しました!

ライブコマースにInstagramが最適な理由

――今、ライブコマースを実施する上で一番使いやすいプラットフォームとしてInstagramを挙げられました。それ以外にはどのような選択肢があるのでしょうか?

武者:
ライブコマースのプラットフォームは大きく3つに分類できます。

①SNSのライブ配信機能を使う(SNS型)
②企業のECサイトに埋め込んでライブ配信をおこなう(SaaS型)
③ECモールのライブ配信機能を使う(ECモール型)

②③はある程度の規模や予算が必要になるため、誰でも簡単にというわけにはいきません。もっとも始めやすいのは①です。中でもInstagramは元々のユーザーが多く、機能も豊富で、使い勝手が抜群です。

日原:
YOANは、プロデューサーゆうこす(菅本裕子)が「敏感肌で毛穴や角質が気になる。日々の忙しさに心が依存したくない。」といった自身と同じ悩みを持つ方々の力になりたいという想いで生まれたスキンケアブランドです。ゆうこす自身が徹底的にInstagramの機能をハックして発信してきたこともあり、ライブコマースもInstagramで展開しています。

Instagramは、生配信を気軽に行えるだけでなく、ライブコマースに関する機能が豊富なのも魅力です。フィード投稿で視覚的にアプローチできるほか、ストーリーズは「今」をシェアするのに最適ですし、ストーリーズで使える「質問スタンプ機能」「カウントダウンスタンプ機能」などを活用することで、いろいろな形でコミュニケーションをとることができるのがいいですね。

今は「商品タグ機能」によって、商品にリンクがはれるようになったので、InstagramからECサイトへの導線も以前と比べてだいぶスムーズになりました。個人的には、キャプションに入力可能な文字数が多いのも嬉しい(テキストエリアは上限2200文字)。化粧品の成分について語り始めると、ちょっと文字数がすごいことになるので(笑)。

佐藤:
Instagramは以前から、ビジュアルコミュニケーションを大切にし、ブランドの世界観を伝える手法をたくさん保有しています。Instagramのフィード、ストーリーズ、ライブ(以下、インスタライブ)などを活用し、複合的に1つの世界観を作り上げることができます。ライブコマースとも相性が良いと考えています。

YOANの世界観の作り方

――「世界観」というキーワードが出ました。世界観を作ることに関して、YOANが普段から意識していることはありますか?

日原:
YOANのターゲット層である20代半ば~30代前半の女性は、オーガニックや、クルエルティフリー(動物実験していない)など、環境に配慮したものを意識的に生活に取り入れている方が多いと感じます。そういった方にアプローチできるような、温かみのあるイメージを大事に、落ち着きのある洗練された女性像をイメージして制作しています。

月1回の頻度でSNS用の画像撮影を行いますが、季節感やYOANのイメージに合う雰囲気かどうかをスタッフ全員でディスカッションしながら、イメージを作り上げていきます。

武者:
YOANは商品だけでなく、Webサイト、Instagramのフィード投稿、ライブ配信のBGMまで、なんとなく同じイメージが通底している気がするんですけど。

日原:
そうなんです!!実は、あのBGMはYOANのイメージを伝えて、オリジナル曲を作っていただきました。気づいていただけてすごく嬉しいです。

佐藤:
YOANは、あたたかみのある表現が素晴らしいと感じます。カラーパレットや繊細なフォントなどで、やさしい世界観を演出されているのでしょうか。全体的にプロップ(小道具)に丸いものを使われていますが、これも意図的ですか?

日原:
はい。プロップ(小道具)で、丸みや柔らかさ、温かさを表現しています。打ち合わせ時にブロップスタイリストに訴求イメージを念入りに伝えて、撮影に臨んでいます。

YOANは、以前youange(ユアンジュ)というブランド名で展開しており、2021年の2月22日にリブランディングをしたブランドになります。yoangeは主に菅本のファンの方々に愛されておりましたが、スキンケアブランドとして長く愛されるブランドにするためには、ゆうこすがプロデュースした商品だと知らない方にも手にとっていただく必要があります。そのためYOANでは商品自体の魅力をInstagramの各機能を活用しながらどう伝えるかが目下の私たちの課題です。いろいろな角度からアプローチしていていきたいなと思っております。

「コマーサー」とは何か?

――アイレップでは、ライブコマースに特化した配信者を「コマーサー」と新たに提唱しています。コマーサーとはどういう人ですか?

武者:
いわゆるインフルエンサーを考えた場合、その内訳には、ユーチューバー、インスタグラマー、TikTokerなどがいますが、コマーサーの特性はそれらのインフルエンサーとは少し異なります。ポイントは、影響力があるかどうかではなく、「モノ軸で語ることができる人」。そうした特性を踏まえて、個人の名前で大きな影響力があるインフルエンサーが依頼されて担った場合をプロコマーサー、企業やブランドの担当者・店舗スタッフなど組織内から担った場合をインハウスコマーサーとしています。

ちなみにアイレップでは、視聴者視点、マーケター視点、コマーサー視点すべてを盛り込んだ学習コンテンツを作成し、企業向けに「インハウスコマーサー育成パッケージ」として提供しています。大事なポイントさえ押さえれば、どのような方でもコマーサーになれます。



――YOANでコマーサーをするにあたって、心がけていることはありますか?

日原:
私は、以前コスメの販売員をしていて、今の会社に入社するまで、ライブ配信をしたことはありませんでした。ただ、ライブコマースの経験を重ねるごとに、これも同じ「対ヒト」であり、普通の接客と変わらないと気づいたんです。コメントを読んで、お客様のお悩みに合った回答をする。これって普通に会話だと思いますし、まずはそこを意識して配信しています。

佐藤:
会話をするように配信することは、とても大事なポイントです。わざわざ時間を作って見にきてくださった視聴者の方々に寄り添うことが大切です。ライブコマースも突き詰めると、ヒトとヒトの対話。でもリアルでの対話と違って相手の顔が見えないからこそ、視聴者の意見をしっかり聞き、相手の気持ちやニーズを想像することが重要だと思います。

一方で、クリエイターやブランドの普段は見ることができない裏側をのぞける、非日常感がある、ということも、ライブに参加する理由になります。例えば、森美術館の館長による、インスタライブを活用した美術館ガイドツアーは大きな話題になりました(参考:https://www.mori.art.museum/jp/news/2021/05/4795/index.html)。普段なら、館長に直接ツアーをしてもらうということは難しい。でも、ライブなら一度に沢山の方々を案内することができますよね。このような非日常感の醸成はライブならではだなと思いますし、非日常的なユーザー体験は印象に残りやすいのではと思います。

武者:
おっしゃるとおりですね。日常的な寄り添いと、特別な瞬間を提供するというバランスがうまくとれると、よりブランドの世界観が強く伝わります。『成果を上げるライブコマースの教科書』でも、インハウスコマーサーで基本の運用を行いつつ、ときどきプロのコマーサーとのコラボを織り交ぜることが、売り上げ向上に大きな効果がある事例を紹介しています。

アイレップが提唱する「SIRRASモデル」

――ライブコマースの効果をより高めるためのフレームワークとして、アイレップでは「SIRRAS(サイラス)モデル」を提唱しています。SIRRASとは何でしょうか?

武者:
SIRRASは、Show、Image、Response、Repeat、Activate、Shareの頭文字で、ライブコマースの冒頭から終了までの中で視聴者とのエンゲージメントを高めていくためのポイントを時系列でまとめたフレームワークです。これらの要素を押さえれば、基本的なライブコマースは実施できるはずです。

(図1:アイレップが提唱する「SIRRAS(サイラス)モデル」)

日原:
Repeatは、私もゆうこすから、大事なポイントとして教わりました。コマーサーを始めるときに言われたのは、1つが、最初の15秒間でどういう配信なのかをきちんと伝えること。もう1つが、それを何回もリピートすることです。この2つは最低限やってほしいと教わりました。

最近は手製の簡単な台本を作っていて、「ここでリピート」という文字を書き込んでいます。それぐらいしないと、緊張して忘れてしまうので(笑)。

ライブコマースの評価指標は?

――ライブコマースの運用にあたって指標となる数値は、パッと思いつくところでは、売上総額、販売個数、視聴者数になると思いますが、それ以外に押さえておくべき指標はありますか?

佐藤:
視聴者数だけではなく、エンゲージメントの質も重要です。質問やコメントを通じ、興味、関心、共感を醸成できているか、が大切だと思います。その先に、物が売れるという最終的なゴールが見えてきます。一方で、見るべき中間指標はブランドやクリエイターの方々の目的や状況によっても変わってくるのかもしれません。

武者:
ライブコマースの市場規模が大きくなるにつれて、当然、KPIの設定やレポーティングは絶対に出てくる課題ではありますよね。

私はやはり、Instagramの通常投稿のエンゲージメント数との相関がすごく大きいと思っています。フォロワーが1万人いたとしても、いいねが全然ないのはダメ。フォロワーは1000人しかいないけど、何百いいねがついている方が熱量は高いと判断できます。もちろんフォロワーの質もチェックする必要はありますが。

また、インスタライブの視聴者数が常に安定していることは、1つの指標になると思います。例えば、155cm以下の女性のためのファッションブランドCOHINA(コヒナ)はインスタライブの視聴者数が非常に安定したブランドですが、購入者の大半はライブコマースを見ているんだそうです。やはり日常の基本的な集客活動がロイヤルカスタマーの育成につながると思います。

佐藤:
ライブコマースを非常にうまく使われているブランドを見ていると、事前事後のコミュニケーションも大事にされている印象がありますね。
インスタライブ終了後すぐに「商品タグ機能」を活用した投稿を行い、ストーリーズでシェアし、その数値を細かく見ていると言っていました。例えば、その投稿経由でのECサイトへの流入数、そしてフォロワー以外の方々へのリーチなどです。そのようなKPIやPDCAも有効かもしれません。

売れるライブコマースのコツとは

――今回のテーマである、Instagramを活用したライブコマースの最適解、ズバリ「売れるライブコマースのコツ」は何でしょうか?

佐藤:
ゆうこすさんは以前著書で、熱量をつくり出すことの大切さを強調されていました。
本質はそれに尽きるのではないでしょうか。また、どこまでブランドとしての本物感やリアリティを出せるかということも同時に大切です。
ライブコマースの特徴は、ブランドの魅力をダイレクトにリアルタイムで届けられることです。その利点を活かしながら、ブランドやプロダクトの魅力を本物感(authenticity)とリアリティを持たせながら表現する。そのような「本質的なコミュニティづくり、ブランドづくり」が大切であり、ライブの醍醐味であると思います。

日原:
私は以前、見る側でした。その視点で、一目で見て分かりやすかったり、驚きがあったり、そういうインパクトをすごく大事にしたいと思っています。

例えば、YOANはスキンケアブランドなので、絵的なわかりやすさはありません。その中でどうやって驚きや感動を伝えられるか考えた結果、最近はスキンチェッカーを活用しています。数字で見せると驚きが伝わりやすいし、私自身、言葉にプラスして数字で見せられると購買意欲が上がるので。そういった画面越しの伝わりやすさを意識していくと良いのかなと思います。

佐藤:
聴者の方々に、いかにメリットを提供できるか、ですよね。ためになる情報がシェアされる、トークがおもしろい、聞き心地が良い、元気になれる、など内容は多種多様だと思いますが、何かしらポジティブな、そこに見に行く理由をいかに作れるかが肝心です。

武者:
ライブコマースで商品の魅力を伝える前段階として、通常のマーケティング活動が存在します。Instagramにおいては、日常のフィード投稿、ストーリーズ投稿にあたります。その積み重ねがライブコマースの成否に大きく影響するんです。だからライブコマースで売れるかどうかを考える前に、まずはInstagramを使い尽くして、エンゲージメントを高める活動をおこなうべき。そうした積み重ねがあってこそライブコマースは成功するのだと私は考えています。

この記事の著者

DIGIFUL編集部

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