MozCon 2020セッションレポート:顧客のためのBeyond Marketingの方法:繁栄するブランドエコシステムの価値

2021.01.06

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この記事の著者

増渕 佑美

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタントとして従事。ソリューションビジネスUnitインバウンドマーケティングDivに所属。通販や人材などデータベース型サイトを中心に経験を積んでおり、現在はメディアサイトのSEOも担当し幅を広げている。
好きなこと:散歩、パズル、動物の動画をみること

2014年に株式会社アイレップに入社し、SEOコンサルタント...

MozConとは、SEOに関連したツールやコンサルティングサービスを提供する米Mozが開催している、デジタルマーケティングのカンファレンスです。毎年7月頃に米国シアトルで開催されていましたが、今年は新型コロナウイルスの影響で「MozCon Virtual」として7月14〜15日にオンラインで開催されました。

本記事では、企業のブランディング活動を支援する3 Colours Rules社のBrand StrategistであるFlavilla Fongang氏(以下、フォンガン氏)の「顧客のためのBeyond Marketingの方法:繁栄するブランドエコシステムの価値」についてのセッションをレポートします。このセッションでは、一般的なマーケティングにとどまらず、ブランドエコシステムを構築するための方法について、概要と実践する際のフレームワークが紹介されました。

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参照元 MozCon『How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystem』 (最終閲覧日:2020年12月22日)
(図1:How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystemと題してセッションをおこなった3 Colours Rules社のフォンガン氏)

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ブランドエコシステムについて

フォンガン氏は、ブランドのロイヤルティやライフタイムバリューを高めるには、効果的なブランドエコシステムを構築することが何よりも重要であるとしたうえで、ポイントを3つ紹介しました。

ポイント1:自社ブランドで頻繁に購入する忠実な個人のフォロワーを創出する
これは、一般的なマーケティングにおけるアクイジション(獲得)に関連する施策に時間を費やす必要が無くなることを意味しており、顧客との関係構築に集中できるようになります。

ポイント2:Beyond Marketingを実践してたくさんのエンゲージメントを創出する
Beyond Marketingはたくさんのエンゲージメントの創出につながり、結果として顧客との関係構築に影響します。本セッションでは、このBeyond Marketingについて詳しく解説されています。

ポイント3:ライフタイムバリューを高めるブランドエコシステムを構築する
最後のポイントは顧客のライフタイムバリューを高めるブランドエコシステムを構築することです。リーマンショックや新型コロナウイルスなどの不況下でも継続して商品を購入してもらう方法を見つけることは非常に重要です。

ブランドの基盤を作成する方法を理解する「D.A.C. System」

フォンガン氏はブランドの基盤を整理するためのフレームワークとして、自身が考案した「D.A.C. System」を紹介しました。

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参照元 MozCon『How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystem』 (最終閲覧日:2020年12月22日)
(図2:フォンガン氏考案のD.A.C. System)

 

フェーズ1ではブランドの戦略を、フェーズ2ではブランドのアイデンティティ(顧客からのブランドに対するイメージ)を、フェーズ3ではマーケティングや販売活動について検討します。「D.A.C. System」では、それぞれのフェーズで重要になるキーワードが下記のように定義されています。

フェーズ1:ブランド戦略:Distinguish(特徴づける・区別する)
ビジネスが新規か既存かに関わらず、まずはブランドを特徴づけ、他ブランドとの区別をはっきりさせる必要があります。ブランドの何が注目に値するのか、人々がそのブランドから購入する理由は何か、ブランドがもたらす価値は何か、のような質問に対し明確に回答できる状態を作ります。

フェーズ2:ブランドアイデンティティ:Attracts(惹きつける)
フェーズ1で検討したブランド戦略にもとづいて、顧客を惹きつけるためのブランドアイデンティティを検討します。戦略の前にブランドアイデンティティを検討することはできません。

フェーズ3:マーケティングや販売活動:Convert(切り替える)
フェーズ1,2を踏まえたうえで、マーケティングや販売活動をおこないます。フォンガン氏は、このフェーズは顧客に自社ブランドに切り替えてもらうための方法であると述べています。

「素晴らしいブランドを持っているのに、顧客が増えない」「たくさんのリードがあるのに売り上げが伸びない」などの場合、ブランド戦略に問題があるか、ブランドアイデンティティに問題がある、あるいは正しい順序でブランドの基盤を整理できていないことが問題であると述べました。

ブランドの発展の例:Nike

フォンガン氏は、ブランドの発展の例としてNikeについて年代を4つにわけて紹介しました。

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参照元 MozCon『How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystem』 (最終閲覧日:2020年12月22日)
(図3:Nikeのブランドの発展の例)

 

・1970年代以前
主に商品の価格にフォーカスされていた時代です。また、今では定番の商品が新しかった時代のため、「なぜトレーナーを着用する必要があるのか」のような商品自体の必要性や、購入する意味に人々の関心が集まっていました。このため、Nikeの広告では商品の必要性や使用方法を人々に伝えています。

・1970~1990年代
誰もが同じものを持っていた時代から、人々が選択肢を求めるようになった時代です。自分が身に着けたいものを選ぶようになり、Nikeの広告でも商品の選択肢が提示されるようになりました。ブランドモラルが問われるようになったのもこの頃で、透明性を持った企業活動が重要になりました。Nikeでは、1997年に外部に委託していた生産工場での人権問題が批判された経緯があります。

・1990~2010年代
ブランドのポジショニングに重点が置かれるようになり、製品を紹介するための広告から、「自分のすばらしさを見つける」のようなブランドメッセージが広告で表現されるようになりました。

・2010~2030年代
ソーシャルメディアなどを活用してオーディエンスとコミュニケーションをとるようになってきた時代です。Nikeでは、トレーニングアプリやパーソナルトレーナーのサービスを通じ、人々に運動を促し、ユーザー間で運動の記録を共有できるコミュニティを構築しています。

一般的なマーケティングはD.A.C. Systemでいうフェーズ3への関与となり、ブランドのエコシステム構築まではなかなかサポートされません。Nikeの例のようにブランドと顧客の関わり方を時代に合わせて変化させていくには、マーケティングの枠を超えてフェーズ1,2に関与するBeyond Marketingの実践が重要になります。

ヘアサロンを例にしたブランドの監査

Beyond Marketingの実践方法について、ヘアサロンを例にブランド監査で確認すべき10の項目を一問一答形式で紹介しました。

・質問1:ヘアサロンではどんなサービスを受けられるか
 ∟シャンプー、トリートメント、カット、スタイリング

・質問2:顧客はどのような結果を期待しているのか
 ∟素晴らしい髪形で店を後にすること

・質問3:ヘアサロンの一般的なカスタマージャーニーは何か
 ∟ブランドを認知し、予約または予約なしで、サロンに来て、髪形を整える

・質問4:顧客が抱えている可能性のある問題は何か
 ∟時間の不足、予算、指名のヘアスタイリストに常に担当してもらえると限らない、次回の訪問に関するフォローアップがない

・質問5:どのようにサービス/商品を改善できるか
 ∟予約アプリの作成、贅沢なオプション(例:シャンパンやネイル、マッサージ)の追加
ヘアサロンの場合はヘアスタイリングの差別化は難しい場合が多いですが、その他のサービスを付けて独自性を出すことは可能です。オプションは必要に応じて追加費用を請求することもできますが、一部を無料で提供する方法が効果的な場合もあります。

・質問6:顧客の問題を解決するためには何ができるか
 ∟訪問美容をおこなう、動画チュートリアル付のへスタイリングキットの販売、次回来店のリマインド

・質問7:顧客の心の中でどのような体験を作りたいか
 ∟例)ヘアサロンや家でのハリウッドのような体験

・質問8:どのようにこの体験を生み出せるか
 ∟最高のヘアスタイリストを雇う、有名なヘアスタイリストを起用して動画チュートリアルを作る、豪華で贅沢なサロンデザインにする

フォンガン氏は、一般的なマーケティングでは質問8までで止まることが多いが、Beyond Marketingではさらに先まで考える必要があると述べています。これは、質問8までの内容でも顧客の期待に応えていますが、同じ顧客が継続して購入(来店)する理由を作れていないためです。ブランドが継続して選ばれ続けるために、顧客に興味を持ち続け、付加価値を出し続ける必要があります。この継続的な取り組みがロイヤルユーザーの創出につながり、ブランドの支持者を増やすことにつながります。このため、さらにふたつの質問について検討することが推奨されました。

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参照元 MozCon『How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystem』 (最終閲覧日:2020年12月22日)
(図4:顧客の究極の目標をサポートするにはマーケティングを超える必要がある)

・質問9:顧客はどのようなメリットを期待しているか
 ∟素晴らしい髪形になること
これは、同じブランドから購入し続ける十分な理由になっていると言えるでしょうか。

・最後の質問:顧客の究極の目標は何か
 ∟例1)見栄えをよくして他者から尊重されたい、その一部として髪形を整えたい
  例2)魅力的になり素敵なパートナーを見つけたい、その一部として髪形を整えたい
  例3)特定の集団にふさわしい自分になりたい、その一部として髪形を整えたい

ヘアサロンの例では、髪形を整えるという表面的な顧客のニーズだけでなく、なぜ髪形を整えたいのかという点にフォーカスすることがブランドのエコシステム構築につながると説明されました。顧客にとっての究極の目的を理解し、一般的なマーケティングを超えて、顧客が本当に望むこと対してサービスを提供することが重要です。

ブランディングのステージを意識する

まとめとして、フォンガン氏は顧客との関係を構築する際はブランディングのステージを意識することが重要と述べました。

ステージ1:ブランドが提供できるものや価値を人々に教育する
ブランド独自のサービスを提供し、人々にブランドについての気づきと理解を促します。

ステージ2:顧客を気にかけて接点を持つ
優れたカスタマーサービスの提供などにより顧客との接点を持ちます。

ステージ3:サービス利用による成功体験の共有
サービスに満足してもらえたら、顧客との継続した関係を構築できる(例えば表彰や報酬を伴う)コミュニティを形成します。また、ロイヤルティの高い顧客とのパートナーシップやイノベーションでブランドを拡張していきます。

 

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参照元 MozCon『How to Go Beyond Marketing for Clients: The Value of a Thriving Brand Ecosystem』 (最終閲覧日:2020年12月22日)
(図5:ブランディングにおけるステージのイメージ図)

成熟した大企業では3番目のステージに時間を費やす場合が多いかもしれませんが、中小企業で規模拡大を目指している場合、ひとつめのステップに時間を費やすべきと言えます。自分のビジネスがどのステージからはじめて何をすべきなのかを見極めることが重要です。

 

まとめ

このセッションでは、一般的なマーケティングを超えて、ブランドが継続的に成長することの重要性やフレームワークが示されました。紹介されたフレームを活用して、自社のブランドが顧客から選ばれ続けるために必要な施策を検討しましょう。

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