“好き”の熱量でライブコマースを変える「コマーサー」という新概念

2021.06.03

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DIGIFUL編集部

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ライブ配信とECを組み合わせ、ユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを図りながら販売を行うライブコマース。コロナ禍で注目を集めながらも、インフルエンサーのキャスティングの難しさや、企業内での配信者不足など、多くの課題を抱えているのが現状です。そんな日本のライブコマース市場に「コマーサー」という新概念を提唱するのが株式会社アイレップ。“ゆうこす”こと菅本裕子さんが運営する株式会社321と協業して、ライブコマースに特化した人材の育成プロジェクトを立ち上げました(https://www.irep.co.jp/news/detail/id=47506/)。今回はアイレップの池田好伸さんと武者慶佑さんに、「コマーサー」とつくるライブコマースの未来についてうかがいます。

池田好伸
株式会社アイレップ 第3インタラクティブデザイングループ ディレクター

武者慶佑
株式会社アイレップ 第1インタラクティブデザイングループ ライブコマース・エヴァンジェリスト 日本グミ協会会長

※本記事は博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました。
https://seikatsusha-ddm.com/

“求められているのに成熟していない”ライブコマースにこそチャンスがある

―まず、アイレップがいまなぜライブコマースに注目しているのか、あらためておきかせください

池田:
アイレップでは4年前にインタラクティブデザインDivisonという部署ができまして、ミドルファネルと呼ばれる“認知と獲得の間”のコミュニケーションの設計に注力してきました。そのなかで、やはりソーシャルコマースは無視できない存在。その一方、日本におけるライブコマースは、2017年頃から多くの企業が導入してきましたが、なかなかうまく根付いていないというのが現状。コロナ禍で急速に様々な施策のデジタル化が進む中で、クライアント企業からも社会からも“求められている”のに“成熟していない”分野であるからこそ、チャレンジしたいと考えました。

武者:
やはりコロナは大きな引き金になっていると思います。僕がずっと考えているのは、コロナが収まっても残るデジタル施策は何か。逆に、コロナ禍だから仕方なくやっていただけで、消えていくデジタル施策は何なのか。オンラインでの飲み会はなくなりそうだけど、オンラインミーティングはなくならないよな…なんていうことを色々考えるなかで、ライブコマースは今後も残っていくものだと感じました。はじめはお店を開けられないから仕方なくはじめた手段かもしれないけれど、お店に行かなくてもショッピングができるのってすごくいいよね、という新しい体験が生まれ、デジタルトランスフォーメーション(DX)化が進んだ。これは、この先対に伸びる分野だと思って飛び込みました。

 

―ライブコマースと従来のテレビ通販番組とのいちばんの違いは何でしょうか

池田:
まずはメディアの違いですよね。テレビの通販番組は、なんとなく流れているのを“ながら見”することができますが、ライブコマースはわざわざ見にいかなければいけません。また、スマートフォンは基本シングルタスクなので、別のことを同時にできない。だから、ライブコマースのライバルって、スマホゲームや友達から突然入ってくるLINEだったりするんです。だから、見にいく理由と、見続ける理由をつくらないといけない。そこに向き合わなければならないのです。

武者:
あとは、双方向性があるかないかですね。テレビでは一方的に紹介されたものを見て判断するしかないけれど、ライブコマースだったら「もっとここを見せて!」というのをコメントできる。さらに、インフルエンサーのようにSNSで発信力がある人が売るというのも大きな違いです。テレビショッピングでも有名な出演者はいらっしゃいますが、SNSでフォロワーがたくさんいるのとはまた違う。もちろん、単純にフォロワーの多い人が売れば売れる、ということではありません。そのものに対する知識と熱量をいかにもっているかが重要。そういう熱量とスキルをもった、ライブコマースに特化した人材を「コマーサー」として新しく位置づけしたんです。

必要なのは、フォロワーの多い人ではなく、企業とユーザーをつなげてくれる人

―「コマーサー」という概念をつくったのはどうしてですか?

武者:
これまでも、企業とインフルエンサーがコラボしてライブ配信でものを売る、ということはあったと思います。そのとき、大体が「有名なYouTuber誰?インフルエンサー誰?」という、フォロワーの多い人探しからはじまってしまう。それってちょっと違うんじゃないかと思うんです。インフルエンサーありきではなく、商品やブランドを真ん中に置いたコミュニケーションをしなければ、企業とユーザーがつながることはできないからです。商品を理解し、ブランドを理解したうえで、ユーザーがどう動くかまでを設計できるのが「コマーサー」。いちばん重要なのは、フォロワーが多いことではなくて、企業とユーザーを結び付けることができる、ということ。このような人材を増やしていく必要があると考えました。

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Influencer(ヒト軸一方向)
自分のキャラクターをフォロワーに向けて発信する

YouTuber(ヒト+コト軸一方向)
自分のキャラクターや企画(コト)をフォロワー (視聴者)に向けて発信する

Liver(ヒト軸双方向)
ライブ配信で自分のキャラクターをフォロワーに発信し、フォロワーからのコメントなどにリアルタイムで答える双方向性を持つ

Commercer(ヒト+モノ軸双方向)
自分のキャラクターとモノ(商品 ・サービス)の魅力をフォロワーに発信し、フォロワーからのコメントなどにリアルタイムで答える双方向性を持つ

 

―そこで協業されたのが、ゆうこすさんの株式会社321なんですね

池田:
ゆうこすさんはご自身でブランドのプロデュースをしながら、他のブランドのライブコマースに出演することなど、本当に色々な立場でライブコマースに携わっていらっしゃいます。また、「ライブ配信で生きていく」という321の理念にも非常に共感しました。僕らも、コマーサーで生きられる人が出てきたら本当の成功だと思っているので。企業の商品を人が売るということは、極端なことを言えば、人が店舗になるということ。例えば「とあるコスメブランドの山田花子店」みたいな概念ができたら、かなりおもしろい世界になると思うんです。そういうコマーサーという職業を一緒につくっていきましょうということで協業がスタートしました。

 

―コマーサーという職業をつくる、とは具体的にどういうことなのでしょう?

武者:
コマーサーには「プロコマーサー」と「インハウスコマーサー」という概念があります。「プロコマーサー」というのは、例えばゆうこすさんのように、ライブコマースのスキルをもったプロフェッショナルのこと。企業からの依頼を受けて、第三者の立場でライブコマースに出演します。一方、企業の社員の方々に配信手法を身につけていただき、自社で運営できるようにスキルアップしていただくのが「インハウスコマーサー」の育成です。

321に所属されているライバーさんは、すでにカメラの前で話すスキルも、コメントを読みながら時間内に収めていくスキルもある方たちなので、そういう方にプラスして身につけていただくポイントはマーケター視点。

コマーサーには3つの視点が必要だと考えていて、ひとつめは「配信者視点」もうひとつは「視聴者視点」、さいごが「マーケター視点」。コマーサーは美容なら美容、ファッションならファッションと、自分の好きな分野について熱量高く語るというのが前提になりますが、ただただ熱狂的に魅力を伝えるだけではだめ。売る、というコンバージョンを意識したうえで、空気をよんだコミュニケーションが取れることが必須になります。自分の好きなことを、いかにマーケター視点で熱く語れるかが勝負なんですね。

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いちばん大切なのは“配信の前”。好きだからこそ熱量が生まれる

―好きなことを熱量高く、となると、商品をいかに愛してもらうかが肝になりますね

池田:
そこが命だと思っています。ゆうこすさんともよく話しているのが、いきなり本番前に、今日の商品はこれですと言われたってできないということ。やっぱりいちばん重要なのは、配信の前なんです。どれだけそれを使っているか、どれだけそれを好きになったか。そうじゃないと熱量なんて生まれないですよね。

このコマーサー事業は「TAKE ZERO」という弊社プロジェクトの一環なんですが、プロジェクト名の由来も実はここから。「TAKE ONE」より「TAKE ZERO」の方が重要だよという意味を込めてるんです。

武者:
「TAKE ZERO」が組み立てられていないと「TAKE ONE」までたどり着けないですからね。これからは、Instagramに一回投稿するといくらですみたいな従来型のインフルエンサー契約ではなく、本当に好きだからフォロワーにおすすめする、という流れをつくっていきたいですよね。

 

―商品への理解も愛情も深いインハウスコマーサーへの期待も高まりますが、こちらの育成はどのように考えていますか?

武者:
ワークショップやセミナー、カメラの前で話す練習などさまざまなプログラムを考えていますが、テクニカルな部分をフレームワーク化してお伝えしたいと思っています。僕は「日本グミ協会」という団体をつくっていて、InstagramとTwitterを合わせると8万フォロワーくらい。そのフォロワーさんに向けてコマーサー的な立場でライブ配信をすることもあるんです。そのとき、台本なんてほぼ用意していなくて、ホワイトボードにメモをいくつか貼っているだけ。「ちゃんと届いたコメントを読んでいるか」とか「途中から見た人にわかるようにダイジェストを繰り返しているか」とか、配信中に意識しないといけないことをメモして進行していく。僕らはそれを、SIRRAS(サイラス)モデルと呼んでフレームワーク化しているんですが、そういうテクニックの部分もしっかりお伝えしていきたいと思っています。

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立場をこえて共創することで、ライブコマースを新たな文化に

―いまライブコマースに興味がある企業の方にお伝えしたいことはありますか?

池田:
そうですね、日本のライブコマースはどうしてもKPIを売上に設定してしまいがち。もちろんそれも大切ですが、どれだけ企業とユーザーがつながれるかというエンゲージメントなしには語れないと思っています。コミュニティ設計とセットにして考えていくことが必須であるということをお伝えしたいです。

武者:
365日毎日ライブコマースとかインスタライブの配信をやっていて、毎回2、300人の方が見にきている女性向けアパレルブランドがあります。社員の方が○○ちゃんと名前で呼ばれていたり、この子が出てきたら特定のスタンプ(クマやウサギのスタンプなど)を押したりとか、まるでアイドルみたいな文化形成までできているんです。そんな風に、人軸を通して企業とユーザーがつながって、熱量高く売っていくというのが、最終的に目指していきたいところですよね。

 

―さいごに、おふたりが考えるライブコマースの未来についておきかせください

池田:
ライブコマースには色々なステークホルダーがいると思っています。クライアント企業はもちろん、僕らエージェンシーも、ハンズアップさんのようなプラットフォーマーも。だからこそ、企業が上から目線で発注するのではなく、クライアント企業もプレーヤーであるコマーサーも、あらゆる立場の人たちが一緒になって新しいショッピング体験を提供できるような世の中になっていけたらいいなと思います。僕らは「TEAM JAZZ 」というプロジェクトを立ち上げて「競争の時代から、共創の時代へ。」というメッセージを発信しているのですが、まさしくそれ。企業もコマーサーも、同志のような立場で共創していける世界をつくっていきたいですね。

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武者:
買い物って、例えばデートの途中でショップに立ち寄るとか、商品にたどり着くまでのプロセス込みでひとつの体験ですよね。それはECも同じ。ただポチるだけじゃなくて、そこまでの“デートもセットになった買い物体験”がライブコマースなんじゃないかと思っています。そのデート部分をちゃんと設計できればエンゲージメントにつながるし、そこまでできてはじめて、文化として根付いてくんだと思いますね。

池田:
ライブコマースが日本の文化として根付く、というのが最終的に目指したい世界です。でもそういう文化って、もう僕らのあずかり知らないところでユーザーとコマーサーが勝手につくりあげていくもののような気がしています。YouTubeがそうだったように。いまはYouTuberごとに色々な型があって、それを視聴者がそれぞれに楽しんでいる。ライブコマース自体はもちろん、コマーサーという概念など僕らのアンコントローラブルなところまでいったら、本当の成功なんだろうなと思っています。僕らがすべてをつくるなんておこがましいし、クライアント企業とコマーサーとユーザーと、みんなで一緒につくっていきたいですね。

 

▼プロフィール

池田 好伸

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株式会社アイレップ 第3インタラクティブデザイングループ ディレクター

2020年アイレップに入社。前職では、イベント・プロモーション企画制作のプロダクションに15年勤務。街角のサンプリングから万国博覧会日本館の催事まで、案件の大小に関わらず、大抵のBTL領域案件のプロデュースを経験。アイレップでは、ライブコマースを中心としたソーシャル統合提案プロジェクト「TAKE ZERO」のオーナーを務めている。

 

武者 慶佑

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株式会社アイレップ 第1インタラクティブデザイングループ ライブコマース・エヴァンジェリスト 日本グミ協会会長

2012年、株式会社シェアコトに入社。エンタメ×企業のタイアッププロモーション、映画プロモーションなどSNS分析をベースに構築。参天製薬、トリドール、パソナテック、GMO、カンロ、中京テレビ、「この世界の片隅に」、「響-HIBIKI」など商材を問わずファンとSNSを繋ぐプロモーション企画やコンサルティングを実施。2013年に日本グミ協会を設立し、『マツコの知らない世界』に出演。Twitterフォロワー69,000人。9月3日のグミの日にはTwitterトレンド1位を獲得。2021年よりアイレップに参画。

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