いま注目のデータクリーンルームとは?~Cookie規制に対応する新たな手法を解説~

2022.09.26

Share

法規制やプラットフォーマーなどにより個人情報の保護やCookie規制が年々厳格化されるなか、規制に順応しながらより精度の高いデータ分析・活用が可能な「データクリーンルーム」が注目されています。

本稿では、デジタルマーケティングをとりまく規制と環境、それに対応する新たな手法のひとつであるデータクリーンルームについて解説します。

個人情報やCookieの規制によるデジタルマーケティングへの影響

1.個人情報に関する規制は大きく2つ

Webサイト閲覧データの取得やリターゲティング広告、ECサイトのカート内状況や購買情報に応じたメッセージ配信など、デジタルマーケティング推進するうえでユーザーデータは必需品になっています。このユーザーデータには、Webサービスを利用する際に登録した個人情報や
Webサイトの訪問・閲覧履歴といった情報を保存するCookieが含まれますが、ここ数年、これらのデータに対する規制が強化されています。

個人情報やCookieにまつわる規制は、法による規制とOSやブラウザのベンダーによる規制の大きく2つが存在します。

(図1:個人情報に対する主な規制)

 

1-1 法による規制
これまで、EU域内で施行されたGDPR(一般データ保護規則)や米国・カリフォルニア州で施行されたCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、海外では個人情報に関する規制が強化されました。2022年4月より日本でも個人情報保護法が改正され、Cookieが「個人関連情報」とみなされることから個人データを取得する場合は、本人の同意が必要になりました。

1-2 OSやブラウザのベンダーによる規制
2017年より、Appleのブラウザ(safari)ではトラッキング防止機能(ITP)が搭載されており、2020年3月以降はサードパーティーCookieが完全にブロックされるようになりました。またAppleのOSであるiOSもiOS14以降から広告用識別子(IDFA)の利用にユーザー同意が必須化され、ITPの適用範囲がアプリ内ブラウザまで拡大するなど年々規制が厳しくなっています。

Googleも2024年を目途に、Google ChromeにおけるサードパーティーCookieを廃止するなど、ベンダーによる規制の動きは今後も強化される見込みです。

なお、Cookie規制に関しては以前DIGIFULで詳しく解説していますので、以下の記事をご参照ください。

▼関連記事

2.デジタルマーケティングの担当者は、特にCookie規制に注意

ユーザーの興味関心事項やWeb上の行動履歴など、デジタルマーケティング施策を遂行する上でベースとなっていたデータの規制が強化されていますが、広告手法やデータの計測など影響範囲が大きいCookie規制は特に意識すべきポイントです。

規制強化の更新頻度が早いため、デジタルマーケティング担当者は常に動向をキャッチアップすることとCookieに依存しない新たなデータ計測・分析方法や代替ターゲティング手法などの検討を並行しておこなう必要があります。

3.Cookie規制に対して、現在注目されているサービスは2つ

前述のような規制強化によるCookieレスの時代が到来しているなかで、サードパーティーCook-ieに依存せずデータ分析・活用するための注目サービスが2つあります。

①IDソリューション
広告主側で保有する顧客データを基軸に、SNSデータや広告データを顧客IDベースで統合し自社専用のデータベースを構築することで、よりユーザーの実像に沿った分析や施策を実行する手法です。データ統合や個人情報の取り扱いの面でややハードルが高いものの自社データを最大限活用し、より高い効果が見込めるデジタルマーケティングが推進できるのが強みです。

②データクリーンルーム
ユーザーの個人情報を特定しない形で、広告主が保有するユーザーデータ、媒体社が保有する広告やSNSデータ、その他位置情報等のデータをセキュアな環境で統合・分析する手法です。

図2:IDソリューションとデータクリーンルームの違い

(図2:IDソリューションとデータクリーンルームの違い)

 

2つのサービスの違いは、データに対する考え方や個人の特定が可能か否かによります。

IDソリューションは、データを資産と考えデータの統合や基盤構築をおこないます。ファーストパーティーデータを中心に統合し、自社サービスの利用者情報など個人情報の特定も可能となります。一方、データクリーンルームは施策指向が強く、データ統合・分析の環境を提供する各プラットフォーマーのサービス(例:広告配信)で活用することが前提となります。プラットフォーマーが保有しているデータを中心に据えているため、住所や氏名といった個人を特定することなくさまざまなデータを統合・分析することが可能です。

例えば、ユーザーが予め許諾した購買データなどを個人が特定できない形で利用しつつ、さまざまなデータと組み合わせながらプライバシー保護やデータの質・量が担保できるという点で、データクリーンルームに注目が集まっています。

データクリーンルームの詳細は次章で解説します。

再認識が必要な広告プラットフォームと活用データ

1.データクリーンルームとは何か

データクリーンルームを語るうえで、前提概念となる「ウォールドガーデン」の存在は欠かせません。

広告配信時に利用するプラットフォームでは、プライバシー保護の観点から配信結果や計測内容に段階的な制限がかかっており、昨今では第三者測定をさせずにデータを囲う傾向にあります。このプラットフォーム内に顧客を流動させるデータ戦略はウォールドガーデンと呼ばれ、代表例としてGoogle,Amazon,Facebook,Twitterなどがあげられます。

このような状況下において、広告代理店や広告主がウォールドガーデンとセキュアな環境下でデータ連携およびさまざまな切り口で広告効果検証を両立させる方法がデータクリーンルームと呼ばれています。

データクリーンルームを活用する事で、広告主側では生活者個人を特定することなくデータ保護法に遵守したセキュアな環境で共有されます。

データ自体はプラットフォーマーの規制がありつつも個人の集計値として共有されます。

2.活用イメージ

具体的な活用方法としては、主に2つ挙げられます。

(1)管理画面で確認できない効果分析の実現
各広告プラットフォーマーの標準管理画面では、可視化されない切り口で広告効果を分析することが可能となります。そのため、分析結果のレポート化や次の施策実施内容へ活用することができます。

(図3:データクリーンルーム における連携イメージ)

 

(2)ファーストパーティーデータ × セカンドパーティーデータとの連携
広告主が保有するファーストパーティーデータと媒体社やパートナー企業から提供されるセカンドパーティーデータを連携することで、ユーザー単位のより深い分析をおこなうことができます。

博報堂DYグループ(以下、HDY)では、ファーストパーティーデータとセカンドパーティーデータを連携し広告オーディエンスを深堀分析するソリューションとして「Audience Dive」を提供しています。
GoogleのデータクリーンルームであるAds Data Hub(以下、ADH)を利用し、ユーザーインサイト分析や計測を型化し汎用的な利用が可能となります。

(図4:各プロダクトやメニューとの連携)

 

個人情報保護の観点により、各国の法規制への対応や広告プラットフォーマー側でも段階的にデータの取得規制が強くなっていくため、今後新たな手法を用いた広告配信を検討していくことが必要となります。また、顧客像の取得にも制限がかかるため、新たなターゲティングやユーザー傾向の分析として、データクリーンルームの理解と活用のニーズは高まると予想されます。

まとめ

本記事では個人情報やCookieに対する規制強化と対応策として、データクリーンルームをご紹介しました。

規制強化の動きに合わせ、データ計測や広告配信ツールを提供するツールベンダーも代替策を講じておりますので、OSベンダーの規制強化の動きだけでなくツールベンダー側の代替策もキャッチアップすると、より環境変化に対応しやすくなります。

しかしながら、アップデートのスピードも速く情報量も多いため、お取引のあるパートナー企業や広告代理店をうまく活用して情報収集することをおすすめします。

当社では今回ご紹介したデータクリーンルームや広告施策はもちろん、その他CDP(Customer Data Platform)やGoogle製品の導入から活用まで一貫してご支援しています。データクリーンルームを活用した環境構築およびダッシュボード活用、その他のサービスについてもご関心・お悩みをお持ちの方は、ぜひアイレップへお問い合わせください。

この記事の著者

内山 恵美

Web媒体社にて約7年のマーケティング経験を経て2017年度にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社に入社。現場目線でのデータシステム最適化の提唱者としてDMP基盤連携・解析を担当。現在は株式会社アイレップに出向し、主にマルチチャネルのデータエンジニアリング・解析、サービス開発案件を担当。
趣味はマリンスポーツ。

Web媒体社にて約7年のマーケティング経験を経て2017年度...

Share

一覧に戻る