ミドルファネル動画施策の改善PDCAを科学する

2022.11.29

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アイレップでは、ミドルファネルを「科学的」に攻略するというコンセプトのもと、数値を担保した独自のPDCAによる「成果の見える」動画施策を実施しています。ミドルファネル領域特有の課題である「認知と獲得の断絶」を解消するにあたり、従来は経験や感覚を頼りに企画・制作されることが多かった認知目的の動画施策の制作に、運用型の手法を導入することで、ミドルファネル領域においてもロワーファネル領域同様の数値化/成果の可視化を求めるクライアントの期待に応え続けています。シリーズ3回目の今回は、PDCAサイクルにおけるC(評価)とA(改善)を中心に、アイレップのミドルファネル領域での取り組みを紹介します。

アイレップの動画制作における「科学的」PDCAの考え方

- 制作した動画を評価・改善し、新たな施策へつなげていくという過程において、どのような「科学する」取り組みがなされているのでしょうか?

小野
ミドルファネル領域の動画施策においては、配信したクリエイティブ動画を適切に評価し、改善しながら、効果を最大化していくことを最大目的として取り組んでいます。

そのためには、配信した動画の成果をクライアントと共有できるように、事前にしっかりと成果判断の定義付けをおこなうことが大事です。もちろん、それを踏まえたコミュニケーションができる関係性の構築が大前提となります。

認知施策といえども「運用型」と称する以上、PDCAを経て再配信した動画は、以前配信したものを上回る効果があるという期待値を、クライアントに対して事前に明確に示す義務があるとわれわれは考えています。そうした考えを背景に取り組んでいるのが、アイレップのミドルファネル領域における「科学的」な動画施策です。

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動画施策で成果が出ないのはKPIの設定に問題がある

- ミドルファネルの動画施策で成果が出ない場合、その原因はどこにあるのでしょうか?

原田
成果が出ない理由はケースバイケースですが、KPIの擦り合わせがしっかりできていないことが多いのは事実です。

ロワーファネル領域からミドルファネル領域に施策範囲を拡大させてきたクライアントによく見られることですが、商品・サービス認知の拡大や、サイト流入増加、いわゆる認知拡大施策をおこなう一方で、どうしても最終的なCV(コンバージョン)もしっかり取りたいという思いも捨てきれない。このようにKPIの絞り込みが甘いと、KPIが認知と獲得の2軸になりがちです。

KPIを2軸にすること自体は決定的な悪手ではありませんが、それならばそれぞれのKPIごとに最適な配信フォーマットを選択して運用しなければなりません。それができない場合は、KPIを認知拡大なのか、獲得なのか、どちらかひとつに絞る必要があります。

成果を最大化させるには、KPIをひとつに絞る

原田
あるクライアントの事例ですが、認知拡大をメインKPIとしつつも、獲得も追うという2軸のKPIでキャンペーンを実施しました。

メインKPIを基に、YouTube広告の認知拡大を目的とした動画フォーマットで配信したところ、認知は得られたものの、サブKPIである獲得が十分でなく、クライアントとしては「成果が出なかった」という結果となりました。

この場合、クリエイティブ自体に問題があったのではないかと推測しがちですが、ここでの問題の本質は以下のふたつです。ひとつは、認知拡大と獲得のふたつをKPIに設定したこと。もうひとつは、KPIに最適な配信フォーマットを選択しなかったことです。

YouTube広告には、さまざまなメニューがあります。KPIが認知なら、課金方式がCPMで、視聴数で機会が最大化するVRC(動画リーチキャンペーン)やTrueViewインストリーム広告を使うのが定番です。ただし、これらはCV獲得には向いていません。一方で、KPIを獲得にすれば、課金方式がCPVで、行動促進を目的としたVAC(動画アクションキャンペーン)で配信するのが基本です。しかし、この広告タイプは認知拡大には向いていません。

成果を最大化させるためには、最適な配信フォーマットとクリエイティブで施策を実施する必要があります。だからこそ、事前のKPIの擦り合わせは非常に大切なのです。

広告配信量は成果判断に影響する

- 成果判断を見誤るパターンには、ほかにどんなものがありますか?

原田
広告配信量の大小を考慮せずに、CTRやCPAのような数値の部分だけで成果を判断すると、誤った成果判断につながります。

配信量を増やせば増やすほどロワーファネルからミドルファネル、場合によってはアッパーファネルまで、ターゲティングの範囲がどんどん広がっていきます。そうした背景を考えずにCPAやCTRのような獲得系KPIだけで成果を見ると、成果判断を誤ってしまいます。これは特にBtoC系の広告でよく見られる失敗例です。

KPIに合わせた広告配信量のコントロールもひとつの方策ですが、それ以上に大事なのが、配信量とCTR、CPA、CVRとの相関をはっきりとクライアントに説明することです。配信量を踏まえた正しい成果判断ができれば、クリエイティブの良し悪しも明白にクライアントに伝わります。

KPIをひとつに絞るか、施策を複数実施する

- 先ほど、KPIと配信フォーマットの不一致という事例を紹介されました。こういうケースでは、評価(C)を下した施策をどのように改善(A)していくのでしょうか?

原田
まず、認知拡大と獲得、どちらがメインのKPIなのかを明確にすることが基本です。とはいえ、例えばKPIを認知拡大に絞ったとしても、やはり獲得もやっておきたいというご要望があるのなら、それぞれに予算をしっかり獲得した上で、それぞれに最適なキャンペーンを実施するべきです。そのために総予算が当初の目論見よりも大きくなったとしても今やるべき最善策と考え、クライアントに納得していただけるまで言葉を尽くすのもわれわれの仕事だと考えています。制作済みの動画は、そのまま配信しても最終的に求めている成果が得られないので、予算と時間が許す限り、設定し直したKPIに合わせた最適な動画クリエイティブに作り替えます。

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小野
実際には、そうした事態を避けるために、最初のP(計画)のタイミングで、複数パターンを作っておいて保険をかけておくこともあります。また、アイレップ独自のバーチャルプロダクションを活用することで、実装と検証を同時に進行させて実現性の高い施策を低コストで実施する方法もあります。

定性×定量の評価から新たな仮説を発想する

- 動画の改善案制作に関しては、どのような手順を踏むのでしょうか?

大塚
動画クリエイティブの改善は、静止画よりも難易度が高いです。なぜなら動画はストーリー構成、演出、秒数といった、複数の要素を内包しているからです。だからこそ、改善案を作る以前に、まずその動画の評価を正しくおこなう必要があります。どこの部分がなぜ良かったか、適切に分析しないと、誤った仮説にもとづいた改善になってしまいます。

それを回避するための大事なポイントは、定量的な評価と定性的な評価、このふたつを常に行き来しながら動画を分析していくことです。特に定量で見るという点が大事です。

- 動画を定量評価するために、何を基準にしていますか?

大塚
定量的な評価は、配信レポートにある動画の視聴率や、アイレップが独自開発したアイトラックAI(H-AI EYE TRACKER)を用いて可視化された数値データを分析し、その結果をもとに定量的な評価をおこなっています。

詳細:アイレップ、独自のAI技術を活用した広告動画の制作サービス「H-AI EYE TRACKER」の提供開始

- 動画を定性評価するのは非常に難しそうです。

大塚
定性的な判断は、感覚的に動画を見て良し悪しを見極めていきます。例えば、この演出が良さそう、このコピーが効いていそう、といった具合です。こうやってお話しすると感覚的な勘だけで判断しているように聞こえてしまいますが、実際は、感覚だけでなく、アイレップがこれまでに膨大に蓄積してきた知見も判断材料にしています。

動画の改善案制作は他社でもおこなっていることですが、最終的に定性だけで評価して終わりとなっているケースがほとんどだと思います。しかし、アイレップでは、定性的な評価を下した後に、それにプラスして定量的な評価も掛け合わせいくところに独自性があります。

- それが「定性と定量を行ったり来たりして評価する」ということなんですね。

大塚
はい、そうです。例えば、「定性的に良いと判断したカットは、その表示時点での視聴率は本当に高いのか」「定性的に効いたと思ったコピーは、アイトラックAIで見た時、本当にしっかり見られているのか」といった疑問も、定性評価を定量データで答え合わせする過程を経ることで、一面的な評価を避け、正しく動画を評価することができます。また、こうした評価プロセスは、「視聴率が低いカットは、本当に成果に寄与していないのか」といった、定量評価の深掘りにも寄与します。

最初の定性評価が、定量データで誤っていたことが分かれば、そこから新たな仮説を発想することができます。また、定量データの深掘りからも、新たな仮説が見えてくることもあります。この反復が、PDCAの回転を促し、成果の出るクリエイティブ制作、施策へと導いていくのです。

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定量/定性の評価を型化し、組織内で共有

- この定量/定性の評価は、システム化されているのでしょうか?

原田
はい。組織内での共有を目的に、分析の手順を型化しています。デジタルマーケティングの知識が全くなくても、きちんと手順を踏めば間違った成果判断をしないというマニュアルを作成して、クリエイティブのメンバーで共有しています。

小野
クリエイティブだけでなく、クライアントとのコミュニケーションの最前線にいる営業のメンバーにも、きちんと当たり前に理解してもらえる状態を目指しています。

原田
営業のメンバーもクリエイティブのメンバーも同じレベルの知見を持つことで、提案する企画内容もより深いものになっていくと思いますし、よりPDCAを増しやすい動画制作環境の構築にもつながります。それは、クライアントが相談しやすい環境作りにもなります。

- 最後、ミドルファネル施策で課題感を抱えているクライアントの担当者に対してメッセージをお願いします。

小野
アイレップのミドルファネル領域での動画施策の強みは、今回お話ししたように、従来、定性的な評価が主流だった領域に、定量評価の「科学的」視点を持ち込み、アイレップがもっとも得意とする運用型の手法で施策を実施していくところにあります。ミドルファネル施策で課題を抱えているご担当者様は、ぜひ一度、われわれにご相談ください。

 

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この記事の著者

小野 洋平

O2Oメディアのスタートアップ企業(現東証プライム)を経て、2010年アイレップへ入社。ロワー、ミドル、アフターファネルまでを担当した後に、アッパーファネルの取り組みに参画。ソーシャルリスニング、モデリング等を用いた事前検証を組み込んだ制作プロデュースに取り組む。

O2Oメディアのスタートアップ企業(現東証プライム)を経て、...

大塚 夏海

株式会社アイレップ クリエイティブUnit インタラクションデザインUnit
広告映像制作会社を経て、2018年アイレップにWebディレクターとして入社。主にロワーファネルクリエイティブの戦略立案・制作・検証プランニングに従事。上記の知見を活かしたミドルファネル動画の成果改善立案を担う。

株式会社アイレップ クリエイティブUnit インタラクション...

原田 陸

株式会社アイレップ 第一コミュニケーションデザインUnit インタラクションデザインUnit
2020年アイレップ新卒入社。広告運用担当として、2年間教育、ファッション、小売りとさまざまなクライアントを経験。広告運用をおこないながら動画プランナーとしての顔も持ち、動画企画から配信後の成果分析をまでおこない、正確な動画PDCAに取り組んでいる。

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