OTT広告を成功に導く3つのポイント解説ウェビナー~プランニング手法から効果計測まで~

2023.04.28

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テレビ視聴者の約7割がコネクテッドTV※1保有者であるというデータもあるように、今やテレビデバイスは重要なネットワーク端末のひとつです。そこで映される割合が多いのが、OTT※2の映像コンテンツです。今後の急拡大が見込める領域だけに広告配信先として注目の媒体ですが、現状では効果計測の手段が貧弱という課題も抱えています。しかし、元々デジタルの効果計測を得意とするアイレップでは、「因果推論」によって「反実仮想」を推計する手法など、「行動・成果ベース」の評価を推進しています。本稿では、広告活用が可能なOTTサービスの紹介に加えて、アイレップならではの効果計測の概要をご紹介します。

※1 コネクテッドTV…インターネット回線につながるテレビデバイス自体のこと
※2 OTT:インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスの総称。映像コンテンツを配信する主なOTTサービスには、Amazonプライムビデオ、TVer、Netflix、GYAO!、Hulu、ABEMA、DAZN、Disney+、YouTubeなどが挙げられる

参考:Unruly、コロナ状況下における消費者のコネクテッドTV視聴や 広告に対する態度変容傾向を公開|UNRULY

引用:OTT(オーバー・ザ・トップ)とは?動画は次の時代へ!映像業界収益の28.1%まで成長するOTT市場の解説

テレビデバイスを取り巻くメディア環境の変化

OTTの特徴に触れる前に、昨今のテレビデバイスを取り巻く環境の変化について解説します。テレビデバイスを取り巻く環境は、ここ10年強で急速に変化してきました。なかでも、テレビデバイスで視聴できるコンテンツの多様化は顕著です。今ではコネクテッドTV経由でYouTubeやNetflixなど、多様なコンテンツが視聴されているような状況です。生活者はテレビデバイスを通じて、好きなコンテンツを好きな時間に好きなだけ見ることができるようになりました。また、ここ数年では、地上波番組の見逃し配信やリアルタイム配信など、視聴者のインサイトに合わせてサービスが多様化し、OTTは今や地上波の民放キー5局に次ぐ第6局として、近年急速にその存在感を増しています。

参考:民法online|「地デジ10年」テレビはどう変わったか~塚田祐之の「続メディアウォッチ」②

参考:テレビ視聴の注視データを取得するREVISIO、調査会社のクロス・マーケティングと共同研究結果を発表 コネクテッドTVの利用実態が判明|PR TIMES

続いてコネクテッドTVの伸長を見ていくと2022年のメディア定点調査では、テレビのインターネット接続率は前年から5.6%増加の51.4%を記録したとされ、過去10年ではじめて過半数を超えたことが分かっています。このことからも生活者が見ているコンテンツは多様化しています。

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(図1:テレビのインターネット接続率)

画像引用:メディア環境研究所|メディア定点調査

 

テレビのインターネット接続率やOTTの利用率が伸びたきっかけの一つとしては、2015年にNetflixとAmazonプライムビデオが日本での動画配信サービスを開始したことが挙げられます。これを機にOTTはスマートフォン、タブレットなどに追加してコネクテッドTV経由で視聴される割合が増加し、その割合は68%にも及びます。

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(図2:テレビデバイスの変化|コネクテッドTVのデバイス保有率)

参考:Unruly、コロナ状況下における消費者のコネクテッドTV視聴や 広告に対する態度変容傾向を公開|UNRULY

 

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(図3:利用デバイスの変化|広告配信のボリュームの変化)

参考:You can watch Netflix on any screen you want, but you’re probably watching it on a TV|Vox

参考:TVer【デバイス別UB数比率】| PR TIMES

参考:生活者に選ばれる YouTube、商品購入に強い影響力 —— 「ブランド・ジャパン」でも 1,000 ブランド中 1 位|Think with Google

参考:「テレビでYouTube」が月間 2,000 万人に急成長中ーーコネクテッドテレビ広告、スマートニュースやパナソニックはこう使った|Think with Google

 

また、コロナ禍でOTTの利用率も伸びており、民放公式テレビポータルTVerの利用率は32.0%、定額制動画配信サービスの利用率は47.5%と増加傾向が続いています。

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(図4:TVerと定額制動画配信サービスの利用率は増加傾向)

画像引用:メディア環境研究所|メディア定点調査

 

以上のデータから、テレビデバイスは、地上波専用の端末からネットワーク端末に変化しているといえます。

OTTの特徴と可能性

OTTの大きな特徴は、多彩なジャンル/コンテンツをさまざまなデバイス経由で観られることです。

例えば、人気のドラマ、情報番組、キッズ向けのアニメなど、さまざまなコンテンツをスマートフォン、タブレット、コネクテッドTVで、いつでも、好きなときに観られます。この「いつでも」というのが、大きなポイントです。

国内のOTT市場の規模は、2024年には広告収入と課金収入で1兆円にまで伸びると予想されています。

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(図5:OTT市場の規模と今後の伸び)

画像引用:国内OTT市場調査を実施しました|デジタルインファクト

OTTの広告活用

急成長市場であるOTTですが、OTTの多くは課金収入型で、広告配信ができるOTTは今のところ限定的です。

2022年11月現在、広告配信ができるOTTは、YouTube、TVer、ABEMA、GYAO!、DAZNのほか、2022年11月からNetflixでも広告配信がスタートしています。

OTT広告は、インストリーム型が基本です。動画と動画の間に配信される広告フォーマットで、テレビCMに近い形となります。

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(図6:広告配信メニュー)

 

以下、Netflix、TVer、ABEMA、DAZNについて、OTT広告の概要を紹介します。

Netflix

Netflixは、国内外の映画、ドラマ、アニメ、ドキュメンタリーなどが定額料金で視聴できる配信サービスです。一番の特徴は、「Netflixオリジナル」と称した、自社制作の独占配信コンテンツが豊富にあること。2022年11月から広告枠が開放されるに伴って、日本でも11月3日より広告付き低価格プラン(広告付きベーシックプラン)が提供されています。

【広告メニュー】
・コネクテッドTV、PC、タブレット、スマートフォン
・15秒、30秒
・スキップ不可、クリック不可

TVer

TVerは、民放テレビ局が共同で運営するテレビ番組を無料で配信するサービスです。放送中のドラマ、バラエティー番組など約400番組が視聴可能です。

【広告メニュー】
・コネクテッドTV、PC、タブレット、スマートフォン
・6秒、15秒、30秒、60秒
・スキップ不可、クリック不可

ABEMA

テレビではリーチできない若年層(M1、F1層)へのリーチが得意なメディアです。それだけでなく、メジャーリーグや麻雀番組なども配信しているので、M2層(35~49歳男性)のユーザーも多く、男性ターゲットの商材にも親和性が高いメディアです。

また、ABEMAといえば“恋リア”(恋愛リアリティーショー)などの根強いファンがいる人気コンテンツとのタイアップ配信や、演者を用いたオリジナルコンテンツのCMも作成可能で、T層(13~19歳男女)やF1層(20~34歳女性)に向けて、番組の世界観に沿った形で広告色なく自然な形で商材の訴求ができるのが強みです。他にも、SNSで話題になるシーズナブルな番組をはじめとする幅広いジャンルへの広告配信、オリジナルタイアップも対応しています。

【広告メニュー】
・コネクテッドTV、PC、タブレット、スマートフォン
・6秒、15秒、30秒、60秒
・スキップ不可、クリック不可

DAZN

スポーツのライブ配信で圧倒的な地位を得ているメディアです。メジャースポーツはもちろん、マイナースポーツまで幅広く配信しているのと、試合中継はもちろん、各試合のハイライトに特化したコンテンツが配信されているのも特徴です。

【広告メニュー】
・コネクテッドTV、PC、タブレット、スマートフォン
・15秒、30秒
・スキップ不可、クリック不可

広告配信先の選び方

OTT広告の配信先を考えるには、利用ユーザー層と配信コンテンツのバランスで決めていくのがベストです。例えば、全世代に訴求したければTVer、特に若年層にアプローチしたければABEMA、スポーツファンにアピールしたければDAZNといった感じで選択していくのがいいでしょう。

また、OTTの広告プランニングは、配信目的に合わせてより細かくカスタムできます。カスタム配信の種類はさまざまありますが、今回は、デモグラ配信、番組指定配信、デバイス指定配信の3つのカスタムメニューを紹介します。

デモグラ配信

デモグラ配信とは、ユーザー登録情報をもとに、狙いたいユーザーのデモグラフィックに合わせて配信するメニューで、ターゲットが明確な場合に特におすすめです。また、テレビCMや、YouTube広告と併せて配信することで、そのリーチ補完にも最適です。特にTVerのマッチ率は約94%と、圧倒的な高さを誇っています。

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(図7:広告配信先の選び方|デモグラ)

参考:【Inter BEE CURATION】TVer、急伸の背景にあるものとは?~TVer Biz Conference 2021レポート~|Inter BEE2022

番組指定配信

番組指定配信とは、広告配信先の番組を指定できるメニューです。出稿したいテレビ番組やジャンルが決まっている場合に、特におすすめの手法になります。

話題性の高い人気ドラマをパッケージングしたもの、配信後にSNSで話題になりやすい番組をパッケージングしたもののほか、育児世帯に視聴傾向の高い育児番組パッケージや、役職者の視聴傾向が高いビジネス番組パッケージなど、さまざまなパッケージングに基づいた配信が可能です。

CMと同じシチュエーションの番組をカスタムすることで、番組コンテンツとの連動感を持たせることができ、各ファネルにおいて高いブランドリフト効果が期待できます。

デバイス指定配信

デバイス指定配信とは、ユーザーの視聴スタイルや広告素材に合わせて、配信先デバイスを選択できるメニューです。選択できるデバイスは、PC、タブレット、スマートフォン、コネクテッドTVなどです。

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(図8:広告配信の選び方|デバイス指定)

 

タブレットは「家でリラックスしている際に活用されやすい」、スマートフォンは「移動中に使われることが多い」などの特徴を踏まえて配信することができます。また、コネクテッドTVは、音あり視聴や画面占有率が高く、テレビCMと同等の特徴を持っているので、テレビCM同様のブランドリフト効果が期待できます。

OTT広告における効果計測の考え方

OTT広告効果を可視化するには

本記事では、デフォルトのレポート以上にOTT広告効果を可視化する方法を紹介します。現状、OTT広告のレポートから分かるのは、配信量と広告接触者数のみになります。

それだけではKPIへの貢献度は見えづらく、具体的な効果を計測するためには、別の手法を用いて具体的な広告効果を算出する必要があります。

ブランドリフトサーベイを活用する

広告配信による意識指標を定量的に測る手法として、ブランドリフトサーベイ(ブランドリフト調査)という手法があります。これは、広告接触者と非接触者を比べたリフト差分を計測する方法ですが、OTT広告配信でもブランドリフトサーベイを実施することができます。

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(図9:アンケートによる効果測定|ブランドリフトサーベイ)

 

具体的な調査方法は、広告出稿後に、広告接触者と非接触者のアンケート結果を比較して、そのリフト差分から、企業やブランドの認知率、想起率、購買意向などを計測する形になります。なお、十分なサンプル数を確保するために、500万円以上の出稿が目安になります。

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(図10:ブランドリフトサーベイのアウトプット例)

より具体的な行動指標を見るには

OTT広告は、認知率、視聴率、視聴完了率、ブランドリフトで評価することがほとんどです。しかし、より具体的な行動指標を見たいというご要望があるのは当然のことです。

その場合、一般的には「キャンペーンマネージャー360」などの第三者トラッキングツールを使いますが、OTTメディアによっては対応できない場合や、別途費用がかかる場合があります。

そこでアイレップでは、統計的因果推論をベースにした、マーケティングの効果を推定するためのパッケージツールを利用して、OTTの広告接触者を可視化する方法をおすすめしています。

具体的には、広告を打たなかった場合の成果を予測し、実際の広告成果との差分を算出することで広告施策による純増効果を明らかにします。図11の青の波形は、広告出稿エリアのLP訪問数、セッション数、CV数の推移を表しています。グレーの波形は広告を出稿しないエリアの推移です。広告を打たなかった場合の波形は、広告非出稿エリアのCV数、サイトセッション数の波形をもとに算出します(青の点線)。広告成果(青線)と打たなかった場合の予測(青の点線)の差分が広告による効果として推定することができます。

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(図11:統計的アプローチ|因果推論(Causal Impact))

まとめ

これまでの説明を踏まえて、OTT広告を成功に導くために理解すべき3つのポイントは、以下のとおりです。

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(図12:OTT広告を成功に導く3つのポイント)

 

1 OTTは利用者が劇的に変化している
日本国内では6人に1人がOTTを利用しており、国内のOTTの市場規模は1兆円にまで拡大するとみられています。

2 コネクテッドTVというデバイスを科学する
コネクテッドTV経由でOTTを視聴するユーザーは約4分の1以上という市場環境から、OTTにおいてはコネクテッドTVで視聴するユーザーを念頭に置いたアプローチが重要だといえます。

3 OTTの効果計測は通常のレポートだけでなく、統計的なアプローチが必要
特に、因果推論(Causal Impact)を活用することで、より詳細な効果計測がおこなえます。

アイレップでは、今回ご紹介した「ブランドリフトサーベイ」「因果推論(Causal Impact)」以外にも、大量の生活者データを保有する博報堂DYグループの強みを生かした計測手法もご紹介可能ですので、ぜひご相談ください

この記事の著者

濵 みやび

2020年アイレップ入社。メディアプランナー。
ディスプレイ・動画・SNSなど幅広いプランニングをおこない、Instagram・TikTok・OTTセールスを中心にプランニングに携わっている。

最近の趣味:ねこ。サイコホラー映画鑑賞、YouTubeであるごめとりい・ヒヨごんの鑑賞。 自然豊かな場所に行くこと。各SNSの流行りの動向を探ること。

2020年アイレップ入社。メディアプランナー。
デ...

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